COLUMN
コラム
廃掃法をわかりやすくまとめたり、廃棄物処理業界のDX化の事例をお伝えしています。
廃棄物処理会社様に向けたお役立ちコラムです。
委託契約書の名義は誰が適切?
突然ですが、産業廃棄物処理委託契約書の名義記載欄を思い浮かべてみてください。会社名とともに「社長」や「工場長」などの個人名が記載されます。この「名義人」というものには何か決まりがあるのでしょうか?法律的に決められていることは?
「契約先から、工場長の名義ではダメだと言われた!本当なの?」という質問を受けることもあります。
今回は、契約書の名義に関わる法的なルールを整理していきます!
法律上は「代表者」もしくは「政令使用人」
委託契約書に「代表取締役社長 〇〇 〇〇」と記載されていれば、皆さん満場一致で問題ないと考えると思います。
法人の代表者ですから、これ以上の責任者はいません。だからといって、とりあえず代表者名義にしておけば良いかというと…実はそうもいかないのです。
そこで、代表者名義とする場合のデメリットをお伝えしていきます。
まず思い浮かぶのは「締結完了までに時間がかかる」ということ。社長のスケジュール上の問題もありますし、工場が複数ある場合は転送の手間もかかってしまいます。こうした事情から、社長名義での契約はなかなか時間がかかるものです…。
そのため、工場長や営業所長など各拠点の責任者の名義で契約をするケースも多いです。もちろん、工場長や営業所長名義で契約することは、法律上問題ありません。
工場長や営業所長のような、拠点の責任者は「政令使用人」と呼ばれています。「使用人」とは、簡単に言うと会社に雇われている従業員全般を指します。ここに「政令」が付くことで、「会社から契約を締結する権限等を与えられた責任者」という意味になるんです。
政令(施工例)第4条の7
法第七条第五項第四号ト、ヌ及びルに規定する政令で定める使用人は、申請者の使用人で、次に掲げるものの代表者であるものとする。
一 本店又は支店(商人以外の者にあつては、主たる事務所又は従たる事務所)
二 前号に掲げるもののほか、継続的に業務を行うことができる施設を有する場所で、廃棄物の収集若しくは運搬又は処分若しくは再生の業に係る契約を締結する権限を有する者を置くもの
これは欠格要件に関する条文です。
このように、廃棄物処理法における「政令使用人」は処理業者の工場長など「拠点の代表者であって、契約を締結する権限を持っている人」を指します。
ということは…?貴社の工場で、代表者である工場長が会社から契約締結権限を与えられていれば「政令使用人」として、工場長名義で契約しても問題ないということになりますね。この場合でも、社長名義ほどではないけど時間がかかる…となりそうでしょうか?
『やっぱり時間がかかるよね』ということであれば、もっと身近で契約内容もある程度把握している人物が締結するのはどうでしょうか?例えば、「営業課長」だったら?内容も本人がある程度把握した上で、スピーディに契約締結できそうです。
察しの良い方は、もうお分かりかと思いますが、課長印ではNGなのです…。
「政令使用人」は「拠点の代表者」という条件がありますから、工場長や営業所長ではなく、課長が押印することはできません!小規模な営業所で、課長が責任者となる場合もあります。この場合はOKです。役職のランクではなく「拠点の代表者」というポジションかどうかがポイントです!
欠格要件には注意!
このように、「拠点の代表者」として会社から権限が与えられていれば、社長以外の方でも問題なく契約行為ができます。
ただし!欠格要件には注意してください!「政令使用人」は欠格要件の対象になる!ということですから、例えば、「酒酔い運転で事故を起こしたー!」なんて場合も、会社の許可が取り消されてしまう場合があります。責任重大です…。
とはいえ、「工場長名義でいいの?」という質問には、「政令使用人として権限があるので、法律上も問題ありません」と回答できることがお分かりいただけたかと思います。
執筆者
安井 智哉
廃棄物処理会社へ出向し実務経験を積む。現場で得た知識や経験をもとに、お客様の課題に真摯に向き合い最適な提案をおこなうコンサルタントを目指す。
また、静脈産業・廃棄物処理業界の”現場”が抱える課題に着目し、ITシステム等の様々なツールを活用したサービスの開発に努める。