COLUMN
コラム
廃掃法をわかりやすくまとめたり、廃棄物処理業界のDX化の事例をお伝えしています。
廃棄物処理会社様に向けたお役立ちコラムです。
排出事業者に教育状況をチェックされる!?
御社では「どんな社員教育をしていますか?」この質問に皆さんはどう答えますか?
従業員の教育状況については、実地確認などの際にチェック項目にしている排出事業者さんもいらっしゃいます。
さらに最近では、コロナの影響で実地確認が難しくなったので、資料取り寄せとヒアリングやアンケートで代替していることも多いようです。実地で詳しく確認できないので、ヒアリング項目を増やしているところもあったり…
今回は、排出事業者がなぜ教育状況をチェックするのか?考えてみましょう。
1:教育が義務ではないから
ご存知の通り、廃棄物処理業に従事するにあたって、試験に合格しなければならないような資格はありません。極端な話ですが、廃棄物処理業の許可は従業員に廃棄物知識が無くても取得できてしまいます。
一定の基準(講習の受講や設備の有無等)と必要な手続きが満たされば行政は申請者に業許可を出します。
従業員の資格取得に義務等がないので、教育は会社ごと千差万別となります。
研修やOJT等で社員教育に努めてはいるものの、各々の企業に委ねられているため、廃掃法等の理解度にバラつきは生じてしまうものです。
業許可を取得していれば、全ての従業員が法律知識も現場知識も完璧!・・・という訳ではないため、排出事業者は委託先が教育状況をチェックしようと努めます。
自動車の運転免許みたいなものと考えると、イメージがつきやすいと思います。免許を持っているからと言って、無事故無違反が約束されているわけではないですよね。最低限の基準を満たせば免許が取得できるので、中には免許を持っていても煽り運転などを行う危険なドライバーもいるだろうと疑われているのです。
2:行政の立入検査でも見られているから
行政の立入検査でも教育状況を聞かれます。
特に、平成28年の食品廃棄物不正転売事件以降には「食品廃棄物の不正転売防止に関する産業廃棄物処理業者等への立入検査マニュアル」が公開されました。このことからも、廃棄物処理業者への取り締まりが強化されてきています。
この中にも、「従業員教育の実施状況とその記録はあるか」などの表記があります。もちろん、食品廃棄物に限らず、適正処理のために必要な教育状況は行政も確認していると考えるべきです。
従業員の知識は、適正処理に関わる重要な要素だという見られ方をしています。
3:無知による違反とその発覚リスクが大きいから
従業員教育をしていないと、コンプライアンスの観点でリスクが高まることになりますね。
では、具体的にどのようなリスクが考えられるのでしょうか?
例えば過去には、「マニフェストに未来の日付を記入した」として行政処分を受けた処理業者がありました。
処分が終了する前にマニフェストの処分終了年月日を記入するというのは、現場の効率化のために行ったことではないかと思います。
「本当はいけないことだけど…」という自覚のある違反なのか、知識不足で違反になることを知らなかったのかは分かりません。ただ、事業停止処分になるほどの大事になるとは予想していなかったのではないでしょうか?
この他にも、「もしかしたら知識不足だったのかな?」と感じる事例は数多くあります。行政の立入検査では、職場の責任者ではなく、実務者に聞き取りをする場合も多いと聞きます。
マニフェストの実務を行っている事務員さんの法律知識が不十分であったため、自分が行っている作業をそのまま話したら、違反行為を洗いざらい伝えてしまっていた…なんてこともあり得ます。
もちろん、違反に自覚があって隠すのはいけません!
何が違反かを知り、違反にならない範囲で業務を効率化していく必要があるので、実務者への教育も欠かせないということです。
排出事業者としては、適正処理をしてもらうことが一番重要です。知識不足によって事業停止や許可取り消しを招く可能性があるとなれば、チェックしたいと考えるものです。
4:教育が売上に直結する時代?
このように、従業員教育を行っていない場合、大きなリスクを抱えていると言えます。従業員教育が不十分だと、排出事業者からの信頼を得られず、場合によっては自社への委託を控えられてしまうかもしれません。
教育状況が売上に直結する時代がきているのかもしれませんね。
執筆者
安井智哉
廃棄物処理会社へ出向し実務経験を積む。現場で得た知識や経験をもとに、お客様の課題に真摯に向き合い最適な提案をおこなうコンサルタントを目指す。
また、静脈産業・廃棄物処理業界の”現場”が抱える課題に着目し、ITシステム等の様々なツールを活用したサービスの開発に努める。