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コラム
廃掃法をわかりやすくまとめたり、廃棄物処理業界のDX化の事例をお伝えしています。
廃棄物処理会社様に向けたお役立ちコラムです。
”名義貸し”による許可取消処分!何が問題?
新聞やニュースを見ていると、廃掃法違反による許可取消しなどが多く、廃掃法の取り締まりが厳格化していることを実感します。
中には、行政のこのような動向に対応しきれず、思わぬ行政処分を受けるといったケースもあるようです。行政処分が下ると管轄自治体のHPでは、会社名、所在地、処分内容などが公開されるのが一般的です。
今回は、2018年12月末にとある会社で気になる行政処分がありましたので、解説をしていきます。
産業廃棄物処理業者の行政処分(許可の取消し)を行いました。
平成30年12月25日、産業廃棄物処理業者に対して、廃棄物の処理及び清掃に関する法律に規定に基づき行政処分を行いました。
【行政処分の内容】
・産業廃棄物収集運搬業の許可の取消し
【行政処分の理由】
平成29年3月15日、不法投棄の通報を受け、立入検査を実施したところ、解体工事から発生した産業廃棄物7,260キログラムが投棄されたことを確認。
当該解体工事について調査したところ、産業廃棄物収集運搬業の許可を持たない者に自己の名義を貸して、収集運搬を依頼していたことが判明。
結果的にこの会社は「許可取消処分」を受けることになりました。
一番問題となり指摘されたのは、解体工事で出た廃棄物を「不法投棄」をした点ですが、私が注目していただきたい点は、自己の名義を貸して、運搬を依頼したという点です。
名義貸しの禁止で陥りやすいケース
廃掃法第十四条の三の三に「名義貸しの禁止」という規定があり、文字通り「名義貸し」が明確に禁止されていることがわかります。
(名義貸しの禁止)
第14条の3の3 産業廃棄物収集運搬業者及び産業廃棄物処分業者は、自己の名義をもって、他人に産業廃棄物の収集若しくは運搬又は処分を業として行わせてはならない。(以下略)
特に、大きな建設現場では、元請・下請・孫請など、多数の業者が出入りしている一方、排出事業者として自己運搬できるのは元請業者のみという制限があります。
下請・孫請に運搬してもらいたいけれど、許可を持っていない…という時に、工事に参加している許可業者の名義を使って運搬させる…ということがあるようです。しかし、これは名義貸しにあたりますから違法行為です。
「名義を借りた側」は廃掃法上、違反になる?
「名義貸しの禁止」は名義を貸した側が違反の違反行為です。
では「名義を借りた側」は罰せられないのでしょうか?
もし、自社で許可を持っていたら、他人の名義を借りる必要はありませんので「名義を借りる=許可を持っていない」ということになります。
よって、借りた側は「無許可で産業廃棄物を運搬した」ということになります。産業廃棄物の収集運搬無許可は、第14条第1項違反に該当し、罰則は、5年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に該当します。
名義貸しの罪は重い
改めて、名義貸しは、「許可のない業者に運搬や処分をさせる」行為です。
廃掃法は、許可を取得する際に厳しい審査がありますし、取得後も定期的に立入検査などをして取り締まっています。
「名義貸し」はこうした「許可業者に課せられる厳しい規制」を受けない脱法行為とも言えてしまいます。細かな部分でうっかり違反してしまった…というケースとは違い、あらゆる規制から逃れる行為ですから、発覚したときの罪も相応に重いわけです。
名義貸しは、する側もされる側も厳しく罰せられるということを肝に命じて、絶対に行わないようにしましょう。現場スタッフの方々への教育も重要になるかと思うので、今一度、周知いただくことをお勧めします。
執筆者
安井 智哉
廃棄物処理会社へ出向し実務経験を積む。現場で得た知識や経験をもとに、お客様の課題に真摯に向き合い最適な提案をおこなうコンサルタントを目指す。
また、静脈産業・廃棄物処理業界の”現場”が抱える課題に着目し、ITシステム等の様々なツールを活用したサービスの開発に努める。