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コラム
廃掃法をわかりやすくまとめたり、廃棄物処理業界のDX化の事例をお伝えしています。
廃棄物処理会社様に向けたお役立ちコラムです。
逆有償とは?既存取引がいつの間にか法律違反に!
突然ですが、逆有償という言葉をご存知ですか?今回は判断に迷いがちな「逆有償」について解説します。
目次
逆有償とは?
分かりやすくお伝えしますと、「有価販売する物の金額(儲け)よりも、支払う金額(コスト)が上回る為、純粋な有価販売とは言えない取引形態」を指して「逆有償」といいます。
商品として見た場合「赤字」になるモノというイメージで捉えていただいても大丈夫です。
廃棄物として受け入れた物が、中間処理後に有価物となることはよくありますが、中には本当に有価物なのか?と疑わしい取引形態もありますよね。
逆有償取引にあたるコストとして最も多く発生するのは、運搬費です。
運搬費が販売代金を上回る場合、運搬段階までは「廃棄物」として扱う必要があります。
環境省の「規制改革通知(H25.3.29付)」では、売却代金と運送費を比較し、排出事業者側に経済的損失がある場合(「運賃による逆有償」「手元マイナス」)については、輸送段階は産業廃棄物に該当し、引取側に到着した時点で廃棄物に該当しなくなる場合があると示されています。
では、マニフェストや契約書はどのようになるのでしょうか?廃棄物処理法の規制を受けるので、収集運搬委託契約を締結し、マニフェストも運搬完了報告であるB2票までを運用します。運搬時のみ廃棄物として扱います。到着後は純粋な有価物となります。この形態を逆有償の中でも「到着時有価物」と私どもは呼んでいます。
既存取引の条件変更に注意!いつの間にか逆有償取引に?
逆有償取引の知識をしっかりと理解していれば、新しい取引を検討する際に「運賃のほうが高くなってしまうな…」とわかった時点で、逆有償の対応をすることになります。
しかし、これで安心というわけにはいきません…。全く新しい取引を検討する際のように、簡単に「逆有償」だとわかるケースは、むしろ稀だと考えています。
例えば、今まで純粋な有価販売だったものが、知らないうちに逆有償取引に変わってしまう場合があります。
この3つが陥りやすい!既存取引が逆有償取引になるパターン
①相場変動により買い取り単価が徐々に下がって…
じわじわと買い取り単価が下がり、気がついたら運搬費のほうが高く、逆有償状態になっていた!
②運搬費の値上げによって…
燃料費高騰などの理由によって、運搬費が値上がりし、逆有償状態になっていた!
③1回あたりの運搬量が減って…
過積載に対する取り締まりが強化されているから…といった理由で、1回の運搬で運ぶ量が減り、運搬費をまかなえるだけの売却代金を確保できなくなっていた!
これらのパターンは、既存取引の条件の一部を変更するだけです。ちょっとした条件変更だと思って軽く考えていると、知らない間に逆有償のボーダーラインを超えてしまっていた!なんてことが起こりかねません。
運搬費以外にも逆有償のリスクが潜む「コスト」とは?
自社が有価物を買い取る立場にある場合は、運送費以外でも費用を請求していないか注意する必要があります。
メーカーが、発生させた製造副産物は、メーカー側が性状をよく把握しており、加工に必要なノウハウや、資材を把握していることがあります。こうした場合に、メーカーから提供される金銭や物品が原因で、逆有償扱いになってしまう場合があります。
例えば、「加工費」など運送費以外の名目でコストを支払っている場合も逆有償です。金銭だけでなく、加工に必要な材料を提供したりといった場合も、「コスト」とみなされ、有価物と認められない可能性が高くなってしまうのです。
また、有価物として買い取った物を加工し、リサイクル製品として取引企業に販売するという形態にも注意しましょう。こうした形態は、一般的には「クローズドループリサイクル」と言って、効率よくリサイクルができるため、推奨されています。
しかし、「明らかに市場価格よりも高い金額でリサイクル製品を販売している」「リサイクル製品を購入しているのが、副産物を発生させるメーカーのみ」といった場合には、逆有償の疑いがかかってしまいます。
純粋な有価物として価値のないものを、リサイクル製品を購入した際の費用に転化することで見かけ上、有価取引に見せているという疑いです。
こうした複雑な形態は、かなり前から続けられている取引の場合が多いように思います。
「以前から、この取引を続けているから」という安心感、そして「取引形態を変えようとすると解約されそう」という抵抗感から、放置される傾向があるようです。
逆有償取で罰金に!?
逆有償取引と知らずに、有価物扱いを続けてしまった場合にどのようなリスクがあると思いますか?
以下は、逆有償取引に対する罰則です。
有価物だと思っていたものが、実は廃棄物だった…その際に該当する廃棄物処理業の許可を持っていなければ「無許可営業(個人:5年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金、法人:3億円以下の罰金)」です。
マニフェストを受け取らずに廃棄物の引き渡しを受けた場合「管理票未交付による産業廃棄物の引渡し(1年以下の懲役又は100万円以下の罰金)」です。
廃棄物を有価物と勘違いすることは、廃棄物処理法の規制を無視したことになってしまいます。また、上記のように様々な罰則の対象となる可能性があります。
「なにか通常の有価買い取りと違うぞ?」と思ったときに、一度立ち止まれるかどうかが命運を分けます。疑いが持てれば、社内で相談したり、それでも結論が出なければ私どものような専門家にご相談ください。
小さな疑問を放置してしまうと、どんどんリスクが大きくなってしまいます。まずは、気づくことができるように、日常業務を注意してみていきましょう。
執筆者
長谷川 優子
お客様への情報のご案内を担当。廃掃法等、難しい法解釈も廃棄物処理業者様・再生資源事業者様の観点から分かりやすくお伝えすることを大事にしています。
お客様が抱えられている日々の悩みや課題等を、少しでも解決&サポートできるよう努めてまいります!