COLUMN
コラム
廃掃法をわかりやすくまとめたり、廃棄物処理業界のDX化の事例をお伝えしています。
廃棄物処理会社様に向けたお役立ちコラムです。
管理者が知っておくべきパワハラの基礎
常に人手不足が続いている産廃業界。今まで力仕事に向いている人材を主に求めてきましたが、今後はこれまで対象にしていなかった人材層も積極的に採用する必要があります。
さらに女性や外国人労働者の採用など、これまでとは異なる多様な人材を確保していくことも必要になってきています。
今までとは違う価値観をもった従業員が増えれば、当たり前に行ってきた指導やコミュニケーションが通じないことも増えていくでしょう。
何気なく伝えた一言が「パワハラ」と捉えられてしまったら…!せっかく入社した従業員が辞めてしまうということにも繋がりかねません。パワハラに限らず、ハラスメント系は今や数えるのが大変なくらいあります。経営者や役員の方々は、時代の変化を鑑みながら、職場の環境を整備し、企業文化の体質を改善していく必要があります。
今回は、「パワハラ」の定義と、どのようなパワハラの種類があるのか?について解説していきます。
パワハラの定義とは?
国が定めている「パワハラ」の定義とは、次の①から③までの要素を全て満たすものをいいます。
①優越的な関係を背景とした言動
立場を利用して、相手に不当な圧力や攻撃をする行為のことを言います。「優越的な関係」とは、例えば上司と部下の関係などです。知識や経験に「差」があり、抵抗または拒絶することができない関係性のことを指します。
②業務上、必要かつ相当な範囲を超えたもの
業務上明らかに必要性のない言動や、業務の目的を大きく逸脱した言動などのことを指します。例えば、「覚えが悪い」「仕事ができない」など、業務の指導を超えて相手を侮辱するような行為です。
③労働者の就業環境が害されるもの(身体的もしくは精神的な苦痛を与えること)
暴力や暴言などで、身体的もしくは精神的な苦痛を与える、就業環境を悪化させるような行為のことです。その行為により、従業員が本来の能力が発揮できず、「会社に出社するのが辛い…」などの支障が生じていれば、その行為はパワハラに該当します。
なお、客観的にみて、業務上で必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメント(パワハラ)には該当しません。
続いては、パワハラの6類型について、みていきましょう。
パワハラの6類型とは?
パワハラには種類があり、身体的侵害、精神的侵害、人間関係からの切り離し、過大な要求、過小な要求、個の侵害という6つの類型に分けられています。例を挙げながら、一つずつ解説していきます。
①身体的な攻撃
「身体的な攻撃」とは、暴行や傷害などの行為のことです。
●該当すると考えられる例
・殴打、足蹴り
・相手に物を投げつける
●該当しないと考えられる例
・誤ってぶつかる
・危険な行為を制止する
例えば、ヘルメットの上からでも、持っている書類などで頭をたたく行為はパワハラになる可能性があります。原則、故意の暴行や傷害は、パワハラに該当すると考えてよいでしょう。
一方で、不注意でぶつかったり、たまたま肘が顔にあたってしまったりなど、偶然起こったことは、パワハラにはなりません。
②精神的な攻撃
「精神的な攻撃」とは、脅迫や侮辱・暴言などの行為です。
●該当すると考えられる例
・人格を否定するような言動
・長時間にわたる厳しい叱責を繰り返す
●該当しないと考えられる例
・遅刻などの社会的なルールを守れず、一定程度強く注意をする
・業務に支障がでる重大な問題行動を行った従業員を、一定程度強く注意をする
例えば、他の従業員の前で「仕事が遅くて無能だ」と言ったり、土下座をさせたりする行為はパワハラにあたります。
一方、例にあげたような行為について、必要に応じて厳しく注意することは、パワハラに該当しません。特に、廃棄物処理の現場では、危険を伴う作業も多く、身を守るために強く注意することが必要な場面もあると思います。そのような指導は、パワハラにあたらないケースもあります。
③人間関係からの切り離し
「人間関係からの切り離し」とは、隔離や無視のことです。
●該当すると考えられる例
・一人の従業員を、同僚が集団で無視をして職場で孤立させる
●該当しないと考えられる例
・懲戒処分を受けた従業員に対して、復帰させる前に別室で必要な研修を受けさせる
例えば、気に入らない部下をあからさまに無視したりする行為が、人間関係からの切り離しのパワハラに該当します。
④過大な要求
「過大な要求」とは、業務上あきらかに不要な業務や、遂行不可能な業務を強制的にさせる行為です。
●該当すると考えられる例
・肉体的に過酷な環境下で、業務に関係のない長時間の作業を命ずる
●該当しないと考えられる例
・育成するために、現状よりも少し高いレベルの業務を任せる
・業務上の必要性から繁忙期に、通常時よりも一定程度多い業務の処理を任せる
例えば、緊急性がないのに、毎週休日出勤を命じたり、未経験の業務を大量に押しつけて期限内に処理するよう命じたりする行為は、過大な要求のパワハラに該当します。
⑤過小な要求
「過小な要求」とは、あきらかに能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じたり、仕事を与えなかったりする行為のことです。
●該当すると考えられる例
・気に入らない従業員に対して、嫌がらせのために仕事を与えない
●該当しないと考えられる例
・従業員の能力や状況に応じて、一定程度業務内容や業務量を軽減する
例えば、ドライバー職で採用した人に、無理やり専門外の業務を行わせたり、特定の従業員のみに仕事を与えなかったりするなどの行為が、パワハラにあたります。
一方、業務過多の解消を目的とした業務の軽減は、パワハラにはなりません。
⑥個の侵害
「個の侵害」とは、私的なことに過度に立ち入る行為のことです。
●該当すると考えられる例
・勝手に私物を撮影する
●該当しないと考えられる例
・従業員への配慮を目的に家族の状況をヒアリングする
例えば、ストーカーに近い行為や個人情報を勝手に他人に言いふらす行為などが、個の侵害のパワハラに該当します。
まとめ
パワハラの定義と6類型についてみていきましたが、いかがでしたでしょうか?
どのような行為が、実際にパワハラになるのかがお分かりいただけたかと思います。
パワハラは職場環境に深刻な悪影響を及ぼす重大な問題です。廃棄物処理会社として、適正処理や安全に運搬することだけでなく、今後はこういった点についても注意を払う必要がでてきています。社員が定着し、活躍できる環境を作るためにも、今までの指導やコミュニケーションを見直す必要があります。
執筆者
安井 智哉
廃棄物処理会社へ出向し実務経験を積む。現場で得た知識や経験をもとに、お客様の課題に真摯に向き合い最適な提案をおこなうコンサルタントを目指す。
また、静脈産業・廃棄物処理業界の”現場”が抱える課題に着目し、ITシステム等の様々なツールを活用したサービスの開発に努める。