COLUMN
コラム
廃掃法をわかりやすくまとめたり、廃棄物処理業界のDX化の事例をお伝えしています。
廃棄物処理会社様に向けたお役立ちコラムです。
繁忙期に気を付けるべき許可リスク
繁忙期に、「車両や人が足りない」といった経験はありませんか?特に年末年始や年度末の時期はこのような事態になることがあると思います。
車両や人が足りないため、レンタカーでの許可取得や他社から人を借りて事態を乗り越えようとしたものの、知らない間に法令違反に巻き込まれている可能性があります。
本コラムでは、繁忙期に陥りがちな許可リスクについて解説します。
引っ越し業者の状況
引っ越し業者のトラックは通常、青ナンバー(軽自動車は黒ナンバー)ですが、3月・4月は白ナンバーの引っ越し業者も現れるのをご存知でしょうか?
これは、繁忙期の特例によるものです。引っ越し業界は繁忙期になると極端に依頼が増え、需要に対して業界全体でも支えきれないほどだそうです。そこで、繁忙期のみレンタカーなどの使用が認められるようになり(ただし事前申請などが必要)、短期のアルバイト雇用なども駆使して何とか繁忙期を乗り切っているようです。
では、産業廃棄物業界も繁忙期には何らかの特例を受けて対応することができるのでしょうか?例えば、日頃出入りしている収集運搬の車両や運転手が、突然変わることがあるかと思います。同じ会社の別車両、ドライバーであれば全く問題ありません。でも、その車両やドライバーが繁忙期の一時しのぎで呼んだ応援だったらどうでしょうか?
残念ながら、廃掃法上の業許可に関して、このような特例はありません。必ず許可を受けた車両を使用して収集運搬を行う必要があります。ですので、その運転手や車両が当該許可業者からみて「契約関係もない全くの他人」「許可外の車両」であれば法違反となります。
レンタカーで許可取得はできるのか?
公益社団法人 全国産業廃棄物連合会収集運搬部会運営委員会の調査によれば、88%の自治体が「レンタル車両を事業の用に供する施設とすることができる」と回答しています。
しかし、レンタル車両が認められている自治体のうち6割以上が賃貸借期間に関する条件を設けています。期間の短い自治体では半年以上、長い自治体では5年以上ですが、1年以上の期間でレンタルすることを条件としている自治体が最も多いという結果です。
レンタル車両の許可取得が認められてはいますが、「繁忙期のみ利用」といった一時的なものを想定しているわけではないようです。繁忙期にのみレンタル車両を加えて変更届出をし、レンタル期間が過ぎたらレンタル車両を削除して再度、変更届出を行う・・・という手順は、現実的ではありません。そのため、繁忙期にのみ車両を増やすという手段は制度上、行えないと考えるのが妥当なようです。
企業が負うべき責任とリスク
一方で、車両は足りているからドライバーさえ確保できればいい、という場合はどうでしょうか?この場合も、「とにかくドライバーを確保したい」とだけ考えていると、「名義貸し」の状態に陥ってしまう場合があります。名義貸しの禁止に該当する条文は次の通りです。
産業廃棄物収集運搬業者及び産業廃棄物処分業者は、自己の名義をもって、他人に産業廃棄物の収集若しくは運搬又は処分を業として行わせてはならない(法第14条の3の3)
ある期間だけ、どうしても人手が足りず、個人事業主のトラックドライバーに依頼し、自社の作業服を着せて自社のトラックに乗ってもらう、という行為は名義貸しにあたるため、行ってはいけません。
リスク回避の方法
ここまで読んでいただくと、繁忙期の一時的な対策として、車両やドライバーを増やすことは難しいことがお分かりいただけたかと思います。では、繁忙期を乗り越えるためには、どうしたらよいでしょうか?
まずは、正しい法解釈が必要です。そして、長期的な視点での事業経営が必要になってくると考えます。ドライバーや車両不足にならないように、計画的な採用活動と車両購入や入れ替えなどが求められます。
執筆者
安井 智哉
廃棄物処理会社へ出向し実務経験を積む。現場で得た知識や経験をもとに、お客様の課題に真摯に向き合い最適な提案をおこなうコンサルタントを目指す。
また、静脈産業・廃棄物処理業界の”現場”が抱える課題に着目し、ITシステム等の様々なツールを活用したサービスの開発に努める。