COLUMN
コラム
廃掃法をわかりやすくまとめたり、廃棄物処理業界のDX化の事例をお伝えしています。
廃棄物処理会社様に向けたお役立ちコラムです。
労働災害の事例から見る企業責任
廃棄物の収集運搬・処分においては、重機の操作や化学物質の取り扱いに伴い、現場作業員は常に危険と隣り合わせです。このため、産廃業界は労働災害の発生頻度や重篤度が他の業界に比べても高いと言われています。
今回は、労働災害が発生したケースを基に、企業が取るべき対応や責任について解説していきます。
【ケース】巻き込まれ事故!その後どうなった?
【造粒機に巻き込まれ右腕切断(東京地裁)】
A社の社員Bが、造粒機の作動中に手を差入れたことで、右腕が巻き込まれ、切断する傷害を負った。社員Bは労災保険から補償を受けた後、安全配慮義務違反又は不法行為責任に基づき、元勤務先会社A社に対して損害賠償請求訴訟を提起した。
社員Bは、右腕が巻き込まれてしまったのは「会社に責任がある」として損害賠償を求めました。注目すべきポイントは、「自ら作動中の機械に手を入れた個人にはどのような責任があるのか」「会社としてはどのような責任を問われるのか」です。
本件では、東京地裁の結果として過失割合は50対50となりました。会社と社員(個人)に対して具体的にどのような判決が下されたのか、詳しく見ていきましょう。
会社と個人への判決内容
会社側への判決については、下記3点の通りです。
①教育訓練及び安全管理がなされていない
作業手順書は存在していたものの、従業員への教育が十分に行われておらず、作業手順の徹底がなされていなかったため、会社の責任が認められました。このため、従業員教育の不徹底が本件の事故に結びつくことが容易に予見できたと判断されました。
②従業員の配置の不適切さ
危険を伴う業務において、どのように指導し作業させるかを慎重に検討すべきところ、当時、社員Bよりも1年だけ先輩で、機械に詳しくない者を指導係にしていたことが事故に大きく影響したと判断されました。
③危険防止装置に不備があった
そもそも造粒機に危険防止装置を付けていなかったことが、事故の原因と認められました。結果として、会社の安全配慮義務違反に基づく責任が認められました。
社員Bへの判決については、下記の通りです。
社員Bは大学で材料工学を専攻して卒業しており、機械について一定の知識を有していました。危険が予見できる状況でありながら、意識的に手を入れたことが重視され、社員Bの過失割合が大きく認められました。
従業員に対しての教育の徹底を
今回の労災事例では、社員Bに多くの過失が認められました。しかし、会社側が従業員に対して作業手順の徹底および教育を怠り、危険な作業を放置していた場合、事故が発生すると会社が重い責任を負うことになります。普段から安全作業や作業手順書に基づく指導の徹底が必要です。
従業員の安全を守ることは企業の最重要課題です。改めて、安全教育の見直しや徹底を行っていただければと思います。
執筆者
安井 智哉
廃棄物処理会社へ出向し実務経験を積む。現場で得た知識や経験をもとに、お客様の課題に真摯に向き合い最適な提案をおこなうコンサルタントを目指す。
また、静脈産業・廃棄物処理業界の”現場”が抱える課題に着目し、ITシステム等の様々なツールを活用したサービスの開発に努める。