COLUMN
コラム
廃掃法をわかりやすくまとめたり、廃棄物処理業界のDX化の事例をお伝えしています。
廃棄物処理会社様に向けたお役立ちコラムです。
理念はあるのに、なぜ現場は変わらない?産廃事業者の「言葉」を行動に変える方法
「経営理念をつくった」「行動指針やクレドを掲げた」——それなのに、現場の動きは何も変わらない。朝礼で唱和するだけ、事務所の壁に飾ってあるだけになっていないでしょうか。会社を良くしたいという思いで言葉をつくったのに現場には届いていない。そんな手応えのなさを感じている経営者は少なくありません。本記事では、掲げた言葉が現場に根づかない背景に何があるのかを産廃業の現場に即して整理します。
このシリーズでは産廃事業者が社員に長く働き続けてもらえる組織をどうつくるかについて複数回に分けてお伝えしています。前回は経営者やベテランの判断基準を言葉にして現場に下ろす話をお伝えしました。今回はその先、掲げた言葉を現場の行動に根づかせるにはどうすればよいかを取り上げます。
【結論】
理念やクレドが現場に根づかないのは言葉の出来ではなく日々の判断・評価・声かけと結びついていないからです。掲げた言葉を現場のどの場面で使うのかまで具体化し判断や評価の基準として繰り返し使うことで、言葉は初めて行動に変わります。
立派な言葉ほどなぜ現場で浮いてしまうのか
会社を良くしたいという思いから経営理念や行動指針、クレドをつくる。これ自体はとても前向きな取り組みです。しかし、つくって掲げただけでは現場の動きは変わらないことがあります。
たとえば、次のような状態に心当たりはないでしょうか。
・理念は立派だが現場は「きれいごと」と受け止め行動が変わらない
・朝礼で唱和はしているが意味を意識している人はほとんどいない
・若手に「理念に沿って動け」と言っても「結局どうすればいいのか」が伝わらない
・掲げた言葉が多すぎてどれも意識されないまま埋もれている
これらに共通しているのは言葉が抽象的なまま、日々の判断や行動と切り離されている点です。たとえば「お客様第一」と掲げても、現場での受入時の確認やクレーム対応で具体的にどう動けばよいかにはつながりません。言葉をつくって「掲げた」もののそれを現場で「使う」設計が抜けているのです。
【ポイント①】
言葉が現場に根づかないのは言葉の出来や社員の意識の問題とは限りません。掲げた言葉が日々の判断や行動と結びついていないことが背景にあります。
言葉が「行動に変わる」とはどういうことか
同じように理念を掲げていてもそれが行動に変わる会社とそうでない会社があります。違いは言葉の立派さではありません。その言葉が「現場のどの場面で、どう判断するか」まで具体化されているかどうかです。
たとえば「お客様第一」という言葉も次のように現場の判断場面に置き換えると、行動につながります。
・約束した回収の時間は多少手間がかかっても守る
・対応に迷ったときは目先の売上より、長く信頼される関わり方を選ぶ
・その場を早く終えることより次の担当者が困らない状態で引き継ぐ
この「掲げた言葉→現場の判断場面→行動の形→ほめ方・評価」という流れで整理すると、言葉を行動に変える型が見えてきます。次の表は、その一例です。
|
掲げた言葉 |
現場の判断場面 |
行動に変える例 |
声かけ・評価の例 |
|---|---|---|---|
|
お客様との約束を守る |
回収時間・連絡対応 |
遅れそうなときは先に連絡する |
時間だけでなく信頼を守る対応だった |
|
丁寧な仕事をする |
引き継ぎ・記録 |
次の担当者が迷わないよう記録を残す |
次の人が動きやすい状態にできていた |
|
長く信頼される会社である |
迷ったときの対応 |
目先の売上より関係性を優先する |
その場の売上より長い信頼を選べた |
こうして、抽象的な言葉を「現場のこの場面では、こう考える」という具体的な判断の形にする。そして、その基準を日々の判断・評価・声かけの場面で繰り返し使う。上司が判断に使い、良い行動をほめるときの基準に使い、若手への声かけに使う——こうして繰り返し使われることで、言葉は現場の共通の考え方になっていきます。
この「会社として大事にしたいことを言葉にし、現場の判断や行動につなげ、根づかせていく」という考え方を文化設計と呼びます。これを体系化した取り組みが組織文化の設計・定着支援「Culture Design Program(カルチャー・デザイン・プログラム、CDP)」です。掲げた言葉を現場が日々使える判断の基準に変え行動として根づかせることで、経営理念と現場の間にある距離を縮めていきます。
ここで大切なのは、すべてを現場の判断にゆだねるという意味ではないことです。業許可の範囲や契約条件、法令の解釈に関わる判断は、必ず責任者に確認すべき事柄です。文化設計で共有するのは、そうした確認すべき事柄と現場で判断してよい日々の対応とを分けたうえで「迷ったときに何を大事にするか」という会社としての基準です。
【ポイント②】
言葉は現場の判断場面に置き換えて具体化し、判断・評価・声かけの場面で繰り返し使われて初めて行動に変わります。この「言葉を行動に変え根づかせる」設計が文化設計(CDP)です。
掲げた言葉を現場に根づかせる進め方
言葉を行動に変えるには、新しい理念をつくり直す必要はありません。すでに掲げている言葉を現場が使える形にしていくことから始められます。進め方は大きく 3 つです。
1 つ目は言葉を絞ることです。たくさん掲げてもどれも意識されなければ意味がありません。本当に大事にしたいことをいくつかに絞ります。
2 つ目は判断場面に落とし込むことです。絞った言葉を「現場のこの場面では、こう考える・こう動く」という具体的な形にします。ここが言葉を行動に変える中心です。
3 つ目は評価と声かけに使うことです。その言葉に沿った良い行動を見つけたら、具体的にほめる。日々の面談や評価の場面でもその基準に触れる。繰り返し使われるほど言葉は現場に根づいていきます。
大切なのは完璧な理念体系をつくることではありません。掲げた言葉のうち1つを選び、現場の判断場面に落とし込み、日々の声かけで使ってみる。この積み重ねが言葉を行動に変えていきます。
今日からできる第一歩
文化設計と聞くと大がかりに思えるかもしれませんが、出発点はシンプルです。まずは、自社の理念や行動指針のなかから現場でよく使いたい言葉を1つ選び、10 分だけ次の 3 つに分けて考えてみてください。
① その言葉はどの場面で使うのか
たとえば、回収時間、引き継ぎ、問い合わせ対応、クレームの一次対応など、その言葉が関わる現場の場面を書き出します。
② その場面ではどんな行動になればよいのか
「丁寧に対応する」といった抽象的な言い方ではなく「次の担当者が迷わないように記録を残す」のように具体的な行動の形にします。
③ その行動を見たときどんな言葉でほめるのか
たとえば「今の対応は、うちが大事にしている『約束を守る』に合っていた」と、掲げた言葉に結びつけて伝えます。
この 3 つがそろうと、理念は「掲げる言葉」ではなく現場で使える判断基準に変わります。まずは1つの言葉から始めれば十分です。
自社の状態を確認してみる
最後に、自社の状態を確認してみてください。次の項目にいくつ当てはまるでしょうか。
・掲げている理念や指針が現場の具体的な判断場面と結びついているか
・その言葉に沿った行動を評価やほめる場面で取り上げているか
・若手が「理念に沿ってどう動けばよいか」を具体的にイメージできる状態か
・掲げた言葉が適度に絞られ現場で意識できる状態になっているか
・会社として「何を大事にするか」を現場が自分の言葉で説明できるか
当てはまらない項目が多いほど、掲げた言葉が現場の行動と切り離されている状態だといえます。この確認が言葉を行動に変える出発点になります。
まとめ
【ポイント③】
掲げた言葉が現場に根づくかどうかは、言葉の立派さでは決まりません。会社として大事にしたいことを現場の判断場面に落とし込み、判断・評価・声かけで繰り返し使う——この「言葉を行動に変える」文化設計が経営理念と現場の距離を縮め、人が育ち、長く働き続けられる組織の土台をつくります。
・理念やクレドが根づかない背景には、言葉の出来ではなく日々の判断・行動と結びついていないことがある場合も少なくない
・言葉が行動に変わるのは「現場のこの場面ではこう動く」という具体的な判断の形になったとき
・言葉を絞る・判断場面に落とし込む・評価と声かけに使うの 3 つで言葉は現場に根づいていく
・業許可・契約・法令に関わる判断は責任者に確認すべき事柄として現場で判断してよい範囲と分けておく
・まずは掲げた言葉を1つ選び現場の判断場面に落とし込むことから始められる
イーテラスでは、組織文化の設計・定着支援「Culture Design Program(CDP)」を通じて、掲げた理念や指針を現場が使える判断の基準に変え、行動として根づく状態づくりを産廃業の実情に合わせて支援しています。「理念はつくったが、現場が変わらない」という課題を感じている場合、自社に合った進め方を一緒に整理するところから始められます。
自社の「理念や行動指針」を現場で使える言葉に変えたい方へ
「理念はあるが、現場の行動につながっていない」「クレドはつくったが、評価や声かけに使えていない」という段階でも、まずは実際に掲げている言葉をもとにどの現場の場面でどのような判断基準として使えるかを一緒に整理するオンライン個別相談から始められます。ご希望の方には、Culture Design Program(CDP)の概要資料もお送りします。
▼組織文化の設計・定着支援「Culture Design Program(CDP)」について、詳しくはこちらをご覧ください。
執筆者
チーフコンサルタント 安井 智哉
廃棄物処理会社へ出向し実務経験を積む。現場で得た知識や経験をもとに、お客様の課題に真摯に向き合い最適な提案をおこなうコンサルタントを目指す。また、静脈産業・廃棄物処理業界の"現場"が抱える課題に着目し、ITシステム等の様々なツールを活用したサービスの開発に努める。

