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コラム
廃掃法をわかりやすくまとめたり、廃棄物処理業界のDX化の事例をお伝えしています。
廃棄物処理会社様に向けたお役立ちコラムです。
【令和7年4月公布】 廃棄物処理法改正②‐電子マニフェストに登録するべき項目の追加‐
前回に引き続き、廃棄物処理法改正に関する解説です。前回は「委託契約書の法定記載事項追加」を解説しました。今号では「電子マニフェストの項目追加」について解説します。
施行日は令和9(2027)年4月1日ですが、本年5月からJWNETのシステム上では追加項目が整備され、任意項目として登録可能な状態となっています。
そのため、既に感度の高い排出事業者からは改正対応にまつわる問い合わせが寄せられているかもしれませんね。
施行日はまだ先ですが、今のうちに全体像を把握して、対応方針を決めておかなければなりません。
廃掃法、何が改正されるのか?
改正の対象者は処分受託者(中間処理業者・再生および最終処分業者)です。
中間処理業者など処分受託者が、電子マニフェストを通じて「最終処分終了報告」を行う際の項目が追加されます。
従来「最終処分終了年月日」と「最終処分を行った場所の所在地と名称」が報告事項でした。
ここに新しい項目が追加されるのですが、該当条文がこちらです。
廃棄物処理法施行規則第8条の34の3の2
(処分受託者の情報処理センターへの再生に係る報告)
処分受託者は、法第12条の5第3項の規定による報告(産業廃棄物の処分が最終処分であるときに限る。)を行うとき又は同条第4項の規定による報告を行うときは、受託した産業廃棄物について最終処分が終了するまで又は再生を行うまでのすべての処分について、各処分ごとに、情報処理センターに次に掲げる事項を報告しなければならない。
一 処分を行つた者の氏名又は名称及び許可番号
二 処分を行つた事業場の名称及び所在地
三 処分方法
四 処分方法ごとの処分量(当該処分量を的確に算出できると認められる方法により算出される処分量を含む。)
五 処分後の産業廃棄物又は再生された物の種類及び数量(当該数量を的確に算出できると認められる方法により算出される数量を含む。)
つまり、今までは最終処分先の情報だけで良かったものが、報告事項はすべての工程になるので、最終処分または再生に至るまでのすべての処分方法について追加報告が必要になります。今後は最終処分以外のすべての処理フローについても、処分方法や処分量など含めて報告することになります。
環境省が公開している改正前後のイメージが図1です。
図1:追加項目のイメージ
https://www.env.go.jp/content/000271536.pdf
中間処理から最終処分・再生まで複数の処分工程がある場合、それぞれの工程情報が同一の電子マニフェスト上に追加登録されていきます。
中間処理時の選別などによって、再生と処分のように処理フローが枝分かれする場合も同様に情報が登録されます。その際、それぞれの工程で業者情報だけでなく、処分方法と処分量、処理後物の種類と量も登録されます。
これにより「これまでマニフェストからは得られなかった直接委託先と、最終処分先以外の処分先情報等が得られるようになる」とされています。
これらの項目は電子マニフェストにのみ追加され、項目拡張の仕組みがない紙マニフェストは対象外です。電子マニフェストだけに負担を増やすことに違和感がありますね…。しかし、負担が増えるからと言って電子マニフェストの対応をやめ、紙マニフェストのみの運用に戻っては本末転倒です。
今回の改正は確実に負担が増えますが、紙マニフェストに比べれば依然として電子マニフェストの方が効率的です。
実務上の対応は?
今回の改正では、中間処理業者など処分受託者に新たな義務が課されるため、排出事業者の立場では、得られる情報が増えることになります。排出事業者側のメリットとしては、最後までの処理フロー全体が見える化されることで、排出者としての処理責任が貫徹できる点が挙げられています。
従来は「最終処分先」しかマニフェストで追跡できず、中間処理以降の詳細情報が不十分でした。今回の改正により、排出事業者は「自分の廃棄物がどういう処理を経て、どのように最終処分・再資源化されたか」を電子マニフェスト上で把握できるようになります。
そこで私が気になるのは新しく登録する情報は「どの程度の正確さが必要なのか?」ということです。マニフェスト実務に携わる方は、ここまでの解説で気が重くなっているかもしれません。そう、処理フロー全体を把握するのはとんでもなく大変なのです…!
具体的なケースを想定して考えてみましょう。(図2)
図2:処理フローのイメージ
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中間処理会社Aは、廃プラスチックの選別、破砕、圧縮許可を持っている。
顧客から回収したコンテナ入りの廃プラスチックを選別工程にかけ、再資源化可能な物を破砕・圧縮し、リサイクル施設aに出荷する。
再資源化が難しいと判断された物は、破砕後に焼却処分場Bに出荷する。
リサイクル施設aへの出荷量と焼却処分場Bへの出荷割合は概ね8:2である。
焼却処分場Bでは、焼却によって燃え殻とばいじんが発生する。
燃え殻とばいじんはそれぞれ異なる最終処分場C、Dに出荷する。
燃え殻とばいじんの割合は、概ね1:9である。
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まず中間処理会社Aの処理を経て、リサイクル施設aと焼却処分場Bに枝分かれしています。
その比率は8:2となっていますが、もちろん様々な排出事業者から受け入れた廃棄物を混合して出荷しています。
排出事業者の半分以上がリサイクル不可となるコンテナもあれば、すべてがリサイクル可能なコンテナもあります。
しかし、それを都度把握することは困難です。
多くの場合、中間処理工程では複数社の廃棄物をまとめて処理しますよね?
排出事業者ごとのコンテナを最小ロットとして、内容物の割合を記録しつつ処理を行うというのは、現実的ではありません。そのため「◯月◯日に△△社から受け入れたコンテナの内容物比率」といった情報は正確な実態としては分からないのです。
実際の比率を把握しようとすると、作業工数が膨れ上がり、コスト面からも適切ではありません。
実際のマニフェスト実務に携わった経験のある方なら、この無理難題レベルは直感的にお分かりいただけると思います。
ではどうするかというと、リサイクル施設aと焼却処分場Bへの出荷比率をそのまま、排出事業者のコンテナ比率に転記する…というパターンが多いと思います。
できたとしても「△△社はだいたい6:4だな」「■■社は2:8くらい」というレベルで最初に比率を決めて当てはめるくらいです。
しかし、これを行った場合、各社の設定比率を機械的に当てはめると実際の出荷量と合わなくなるので、最終的には人の手で数値上の”帳尻合わせ”をしなければなりません。
さらに、その先の焼却施設で処理した際の「燃え殻とばいじんの比率」と、複数の排出事業者由来の廃棄物が混合した状態で焼却した時の「貴社が排出した廃棄物の組成に基づく燃え殻とばいじんの比率」などは、ほとんど分からないといってもいいでしょう。
スペースの都合上、上記処理フローは簡略化しています。実際には更に複雑なケースも多く、実務上での処理フロー及び数量把握は、さらに大変だと思います。
結局、中間処理業者ができるのは出荷状況に応じて使い分けるパターンをいくつか作っておいて、ざっくり当てはめていく…ということだと思います。
条文には「処分後の産業廃棄物又は再生された物の種類及び数量(当該数量を的確に算出できると認められる方法により算出される数量を含む。)」との文言があります。
何を以て「的確」かはともかくとして、実測値ではなく独自に算出した数値でもOKとなっているのです。
JWNET上の機能でも、あらかじめ処理先と処分方法ごとの割合(%)などを設定した報告パターンが作成できるようになっています。(図3)
図3:JWNET上でのパターン設定
結局は、最低限のパターンにあてはめられた「ざっくり換算値」になってしまうケースがほとんどだと個人的に予想しています。
全体像を把握したうえで、適切な説明を
電子マニフェストの項目追加の改正に関して、上記のとおり、あくまで参考情報としての数値を入力する形になります。
ここで最も避けたいのが排出事業者から「正確な数値を登録するべきじゃないのか?」という、これまた無理難題を要求されることです。
確かに排出事業者の立場に立ってみれば、正確な数値を入力してもらえればリサイクル率の算定などが正確かつ容易になります。
環境省の資料にも「排出事業者にとって、最終処分までの処理フローが見える化され、処理責任が貫徹できる。また、中間処理業者が直接再資源化していない場合でも、二次マニフェスト以降で再資源化されていれば、排出事業者がその寄与を確認することができる。」と書かれています…。
排出事業者が「正確な数値を入力してもらえる」と思ってしまうのも無理はないのですが、現実は難しいことをどう理解してもらえるか?が問題です。
一番避けたいパターンは、経験や知識が浅く全体像を把握していないメンバーが、説明不足で誤解を与えるような言い方で答えてしまうことです。
「どの会社さんにも同じ比率で入力していますよ」
「処理後の出荷先比率は、計ってないですねぇ」
これだけを聞いてしまった排出事業者は「この会社、大丈夫かな?」と思ってしまいます。
しっかりと全体像を把握したうえで
「都度計量して比率を把握することは現実的には難しいのですが、これまでの実績から係数を決めて、なるべく実態に近いように入力しています」
というような説明ができれば、印象はかなり変わります。
そのため、排出事業者からの問い合わせがあった場合には「誰が、どのような説明をするのか?」を事前に検討しておくと良いでしょう。

執筆者
安井 智哉
廃棄物処理会社へ出向し実務経験を積む。現場で得た知識や経験をもとに、お客様の課題に真摯に向き合い最適な提案をおこなうコンサルタントを目指す。
また、静脈産業・廃棄物処理業界の”現場”が抱える課題に着目し、ITシステム等の様々なツールを活用したサービスの開発に努める。