前回は測定の結果、濃度が0.05mg/m³以上となった場合は、対策が必要になることをお伝えしました。

今回は、主な対策として呼吸用保護具（マスク）の選定とフィットテストについて確認しておきましょう。

必要な措置～換気装置の風量増加など～

濃度が基準を超えた場合の措置については「換気装置の風量増加」が主な内容として示されています。一方で、例えば以下の対応も有効です。

・溶接方法や母材、溶接材料等の変更による溶接ヒューム量の低減

・集じん装置による集じん

・移動式送風機による送風の実施

これらの対策を行ったうえで、最終的に判明した濃度を元に呼吸用保護具であるマスクを選んでいくことになります。

マスクの選び方

マスクは、濃度測定の結果、マンガン濃度の最大値（C）を0.05で割り「要求防護係数」を算出します。この要求防護係数を満たすマスクを選びましょう。

出典：厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「金属アーク溶接等作業を継続して屋内作業場で行う皆さまへ」
（https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/sai_det.aspx?joho_no=542）

濃度測定時には0.05mg/m3未満を目標に対策をして測定していました。なので、対策が十分であれば要求防護係数は1未満になります。このレベルなら、使い捨て防塵マスクでも十分ですね。

一方、対策が難しく、どうしても測定濃度が高くなってしまう場合は、要求防護係数が1以上です。

マスクは、種類と製品規格によって、防護レベルがランク付けされています。
商品に、RS3などの区分が表示されているかを確認してみてください。区分に応じて「指定防護係数」が定められているはずです。この係数が「要求防護係数」を上回るように、マスクを選びます。

指定防護係数一覧

出典：厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「金属アーク溶接等作業を継続して屋内作業場で行う皆さまへ」
（https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/sai_det.aspx?joho_no=542）

フィットテストの実施

「フィットテスト」とは、マスクが正しく装着されているかの確認作業のことです。
どれだけ高性能なマスクを使用しても、顔とマスクの間に大きな隙間があれば元も子もなくなってしまいます・・・。しっかりとマスクがフィットしているかをテストするのが「フィットテスト」です。

方法は、JIS T8150で定められています。具体的には、マスクの外側と内側の濃度測定を実施し、以下の式から「フィットファクタ」を計算することになります。

出典：厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「金属アーク溶接等作業を継続して屋内作業場で行う皆さまへ」
（https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/sai_det.aspx?joho_no=542）

フィットファクタが「要求フィットファクタ」を上回っていればOKです！

要求フィットファクタ

出典：厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「金属アーク溶接等作業を継続して屋内作業場で行う皆さまへ」
（https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/sai_det.aspx?joho_no=542）

濃度を測定する方法は「定量的方法」といわれています。専用の測定機も売られていますので、詳しい測定方法は測定機のマニュアルなどを確認してください。

JIS T8150には「定性的方法」も記載されており、密閉したフードの中に甘味料である「サッカリンエアロゾル」を噴射して、本人が甘みを感じるかどうか、といったテストを行います。定性的方法についても、市販の専用測定キットがあります。

健康診断の実施と結果の保存

溶接ヒュームを取り扱う作業に常時従事する労働者に対しては、健康診断を受診させる義務があります。

測定期間は６ヶ月以内ごとに１回（１次健診）です。健診の結果、症状が認められた場合など、医師が必要と判断した場合にはさらに規定の事項について追加の健診が必要です（２次健診）。それぞれの健診項目は表の通りです。

溶接ヒュームの健診項目

出典：厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「金属アーク溶接等作業を継続して屋内作業場で行う皆さまへ」
（https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/sai_det.aspx?joho_no=542）

健康診断の結果は５年間の保存が必要です。

押さえておきたいその他の措置

その他にも、必要な措置は多岐に渡ります。溶接作業は、産廃業界だけでなく様々な業種や職場で行われる可能性があり、決して珍しい作業ではありません。しかし、近年の規制強化による対応が決して十分とは言えない職場も多いようです。適切な対応を早急に完了させましょう。

その他必要な措置

出典：厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「金属アーク溶接等作業を継続して屋内作業場で行う皆さまへ」
（https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/sai_det.aspx?joho_no=542）