COLUMN
コラム
廃掃法をわかりやすくまとめたり、廃棄物処理業界のDX化の事例をお伝えしています。
廃棄物処理会社様に向けたお役立ちコラムです。
実地確認で排出事業者はここを見ている ~評価するポイント~
多くの自治体で排出事業者に対して、義務づけられている実地確認ですが、排出事業者からの信頼を高めるという意味で、処理業者としても重要なものになってきます。
一方で、担当者の方から、「実地確認の対応では何を注意すればいいの?」という質問をよくいただきます。
今回は、行政や排出事業者の視点から、実地確認で見られるポイントを紹介します。重要ポイントを押さえることは、適切な対応の近道になります。
目次
実地確認の対応が重要なワケ
現実問題として、実地確認があると「対応する人員の確保」「工場がいつも通りの稼働をできなくなる」などという問題が起きますよね。
確かに、実地確認は事前の準備や実際の対応など、手間のかかるものです。
しかしながら、適切に行わないと排出事業者からの信頼を失うことにもつながります。また、契約前の実地確認に関しては、見積条件は問題ないのに、確認した結果(排出事業者からの評価が低く)契約に至らないといったケースに陥ることもあります。
契約前後を問わず、実地確認で排出事業者に安心いただけるよう受け入れ体制の整備をしたり、いつでも対応できるように、廃棄物の保管状況を常に適切に保つといった取り組みは重要になってきます。
実地確認の最重要ポイント
「食品廃棄物の不正転売防止に関する産業廃棄物処理業者等への立入検査マニュアル」を参考にポイントを解説します。
これは、「食品廃棄物横流し事件(ダイコー事件)」の後に作成され、各都道府県に配布されているものです。事件以前のマニュアルよりもさらに踏み込んだチェック手法が記載されており、その内容は食品のみならず、産業廃棄物処理施設全般に応用できます。
こちらのマニュアルを排出事業者が参考にしている例もあります。そこで、マニュアルから「重要ポイント」を抜粋し、どこが見られるのか?をチェックしていきます。
最も重要なのは財務状況
「それは当たり前じゃない?」「優良認定の要件になっているくらいだし」と思われるかも知れません。もちろん、財務状況は非常に重要な要素です。
一般的に不適正処理をした業者に見られる特徴は、経営困難による在庫過多と言われています。
財務状況の悪化を引き金にして処理が滞り、最終的にはオーバーフロー状態となってしまうメカニズムです。
財務状況を評価するのは書類だけではない?
排出事業者は財務状況を重要ポイントとしてチェックします。
但し、財務状況というのは、書類上に現れる数字の話だけではありません。
マニュアルでは、様々な判断要素が紹介されており、書類以外でも「財務状況がよくないのでは?」と思われてしまうポイントがあります。
排出事業者が見ている財務体質のポイント
特に気を付けるべき点は大きく3つあります。
①設備の老朽化、損壊を放置していないか
設備の老朽化であったり、損壊がそのままになっているのを見たら、「設備投資、維持管理を行う余裕がないのかな?」と、捉えられてしまいます。
「優先順位を考え、ただ後回しにしていただけ」ということもあるかと思いますが、排出事業者もリスクを最小限に回避するために、厳しく実地確認で評価を行います。分かりやすい老朽化だけでなく、外観から感じる違和感(車両やコンテナ、外壁の傷、凹み)にも気を配れることが望ましいです。
細かな部分まで管理されていると感じて貰えれば、高評価に繋がります。
②従業員が常駐しており、設備を運転しているか
極端に人が少ないと、「人件費が捻出できていないのか?」「人件費を削減しなければならない状態なのか?」と思われてしまいます。
だからといって、「常に多くの従業員が施設をフル稼働させている」という状況は、現実的ではありません。また、施設への立ち入りがある際には、安全上の観点から、どうしてもいつもどおりの稼働ができない場合もあります。
こうした場合には、作業日報や施設管理表、帳簿などから平常時の稼働状態を説明できるようにしておくことが重要です。
ただ単に「今日はたまたまです」というより、様々な資料を使って、⽉間でどれくらいの搬入・処理が⾏われているかなどを伝えると、信頼度が増します。更に、管理体制が整っていることをアピールする効果もあります。
③未処理在庫・処理残さ在庫が増える
未処理在庫・処理残さ在庫が多いと、「2次処理をする廃棄物の委託費用が捻出できないのか?」と思われてしまいます。
そもそも、未処理や処理残さ等の在庫が増えるのにはよくあるケースとして3つの段階があると考えられています。
まず、処理不全や手抜きにより、製品化するための十分な加工が行われない状態になってしまいます。⼗分な処理をするための資⾦や⼈⼿が捻出されないため、不純物が混ざっていたり、基準値を超える有害物質が残っていたりする再生品を販売してしまうことになります。
そうすると、処分が追い付かなくなり、処分場の敷地内や他の場所に、ひたすらものを溜め込んでしまいます。処理不全により、世に出せない場合や買い⼿がいない場合、たとえ品質的には問題なくても、市場性がなく安定した販売先が確保できなくなり、在庫過多に陥ります。
最終的には、溜め込んだ廃棄物が撤去できなくなり、そのままとなってしまいます。
在庫状況と財務をつなげて判断される
排出事業者の多くもこのように考えています。
中には、「実地確認は在庫状況をチェックするもの」と言う担当者もいるくらいです。在庫過多の問題があると財務状況がよくないと判断して、「この処理業者に任せても大丈夫なのかな?」と考え、今後の委託を控えるかも知れません。
排出事業者の中でも、ベテラン担当者などはリスクを回避するためにここまで考えます。
さすがに細かくないか?と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、信頼を得るためにも重要ポイントを押さえて管理を徹底することで、ワンランク上の処理業者と認識されます。
こういったチェックポイントの確認に通じるものとして、弊社では行政処分リスク低減サービスを提供しております。行政処分リスクの低減に併せて、排出事業者から高い評価を得るためのサポートも行っています。気になる点や疑問等ありましたら、お気軽にお問い合わせください。
執筆者
安井 智哉
廃棄物処理会社へ出向し実務経験を積む。現場で得た知識や経験をもとに、お客様の課題に真摯に向き合い最適な提案をおこなうコンサルタントを目指す。
また、静脈産業・廃棄物処理業界の”現場”が抱える課題に着目し、ITシステム等の様々なツールを活用したサービスの開発に努める。