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コラム
廃掃法をわかりやすくまとめたり、廃棄物処理業界のDX化の事例をお伝えしています。
廃棄物処理会社様に向けたお役立ちコラムです。
専ら物と有価物の違いは?【一覧ですっきり分かる】
「専ら物と有価物って結局なにが違うの?」
「専ら物と有価物の違いをお客さんに質問されても上手く答えられない。」
こういったお話をよくお聞きします。
専ら物の定義については、以前にも取り上げていますが、今回は「有価物との違い」に焦点をあてて解説していきます。
過去コラム:【専ら物】許可・契約書・マニフェスト何が必要?
専ら物・有価物とは?廃掃法上の取り扱いは?
まずは、改めて専ら物と有価物とはなにか?廃掃法上での取り扱いはどうなるのか?について振り返っておきます。
●専ら物
専ら物とは、廃棄物の中で専ら再生利用を目的とする、古紙、金属くず、空きビン類、古繊維を指します。
「専ら物だったら、廃棄物ではない」という訳ではなく、廃棄物の中に「専ら物」という細かな分類があるイメージです。廃棄物であることに変わりはないですから、基本的には廃掃法に則った対応が必要となります。しかし、専ら物は、廃掃法の規制が一部免除されます。
一般廃棄物の場合は業許可、産業廃棄物の場合は業許可とマニフェストの発行が義務付けられていますが、専ら物に該当する場合、これらは免除されます。
●有価物
一方、有価物とは、他人に有償で売却できるものです。
ですので、そもそも廃棄物には該当しません。そのため廃掃法の規制はかからないので、契約書・マニフェスト・許可書などといった廃掃法の規制全般は適用されません。
※一部例外として「有害使用済機器」があります
過去コラム:▼”有害使用済機器”とは?産廃許可を持っていても認定がいるの?
●ポイント
専ら物は廃棄物であり、一部の規制が免除されるだけで、有価物のように全く規制がかからないわけではないことに注意しましょう。
裏を返せば免除される部分以外は、通常の廃棄物と同じように扱うと考えておけば安心です。
専ら物・有価物の実務上での違い
専ら物・有価物について実際によくいただく質問を一覧でまとめました。
次の章では、理由や注意事項を詳しく説明します。
●詳細の解説
具体的にイメージいただくために、専ら物・有価物について実際にあった質問を例にとって解説します。
下記の専ら物は、産業廃棄物の区分に該当する専ら物を想定しています。
■処理業の許可を取得する必要があるのか?
専ら物:産業廃棄物処理業の許可取得が免除
有価物:許可はそもそも不要
専ら物・有価物ともに収集運搬・処分の許可は不要になります。
専ら物は”免除”ですので許可を取得しても、もちろん構いません。一方、有価物はそもそも許可の対象とされていないという違いがあります。
■契約書については必要なのか?
専ら物:産業廃棄物処理委託契約書が必要。
有価物:不要(売買契約書を作成するとなお良い)
専ら物であっても契約書の締結が免除されるという規定がないため、必要だと解釈できます。加えて、契約書は産業廃棄物の委託契約です。専ら物だからと言って必要な法定記載事項を削ってはいけません。
■排出事業者にマニフェストの発行を依頼する必要はあるか?
専ら物:発行が免除
有価物:不要
マニフェストについては、免除規定がありますので必要ありません。こちらも、”免除”ですから、発行しても構いません。
■廃掃法上の運搬基準(車両表示など)などを遵守しなければならないのか?
専ら物:不要
有価物:不要
許可業者は車両表示などの運搬基準が課されますが、専ら物は収集運搬業の許可が免除されるため、運搬基準は適用されません。とはいえ、飛散防止対策などなにも要らないという意味ではありません。万が一、飛散事故などがあった場合には責任追及されてしまいます。法律上は許可業者ほどの縛りがないという程度にお考え下さい。
■自治体への処理実績報告義務はあるのか?
専ら物:不要
有価物:不要
処理実績報告は、許可業者に提出が義務付けられているものですから、許可免除の専ら物や許可不要の有価物を取り扱う場合には不要と考えられます。
■自社敷地に搬入後は保管基準を守る必要はあるのか?
専ら物:不要
有価物:不要
保管基準も、許可業者に対する規制です。その為、専ら物・有価物共に許可対象でない為、法律上は保管基準を順守する必要はありません。しかし、こちらも運搬基準同様、全く管理が要らないという意味ではありません。飛散防止などの対策は最低限行いましょう。
専ら物を廃棄物として扱った方が楽なことも
このように、専ら物を「廃棄物の中で許可、マニフェストが免除される物」という基準だけでも、日常の様々な疑問が解決していきます。
また、専ら物の取り扱いは「免除」規定なので、産業廃棄物の収集運搬業・処分業をお持ちの場合は、専ら物扱いにせず、単純な産業廃棄物として取り扱ってしまうのも一つの手です。
そもそも、専ら物は「既存のリサイクル業者には許可取得などが負担になる」という理由で免除規定が作られているのですから、許可取得ができているのであれば無理に専ら物として取り扱う必要はないのです。
複雑な都度判断や、顧客への説明をするよりも、産廃としてのルーチン業務に乗せてしまったほうが結果的に楽。というケースは意外と多いものです。
※見解の幅について注意
専ら物の免除については、法律上の表現や各行政の見解に幅があります。本コラムでは、実務上一般的に取り扱われる見解を元に解説しています。
管轄行政によって、解釈が異なる場合がありますので、ご了承ください。
執筆者
長谷川 優子
お客様への情報のご案内を担当。廃掃法等、難しい法解釈も廃棄物処理業者様・再生資源事業者様の観点から分かりやすくお伝えすることを大事にしています。
お客様が抱えられている日々の悩みや課題等を、少しでも解決&サポートできるよう努めてまいります!