COLUMN
コラム
廃掃法をわかりやすくまとめたり、廃棄物処理業界のDX化の事例をお伝えしています。
廃棄物処理会社様に向けたお役立ちコラムです。
有価物の基準はあるの?いくらの価値がついたら有価物?
よく、処理業者のご担当者から、「できれば有価物として扱ってほしいと、排出事業者から言われたんだけど、やっていいの?」「今そういった、取引があるんだけど大丈夫なの?」という質問をいただきます。
このコラムを読まれている方も、そういった疑問を持たれることはありませんでしょうか?
目次
有価物扱いにしたい排出事業者のニーズ
廃棄物は、委託契約書の締結義務や、マニフェスト交付義務の有無などがあります。
有価物となればこれらの義務は発生せず、排出事業者としては関わる廃棄物管理業務が減るためなんとか有価物として取り扱って、手間を省きたいという狙いもあるようです。
確かに、排出事業者としては廃棄物を有価物として扱うことができれば、様々な書類管理がなくなり大幅な効率化が図れるため、有価物として扱ってほしいというのが本音です。
一円でも価値があれば、有価物?
「できるだけ取引先の要望に応えたい」という思いと、他に利益の大きい取引がある場合などには、なんとか価格調整をして有価物の扱いにしてしまうというケースもあるようです。
一部では赤字を出してでも、条件のいい契約を守れば、トータルでは利益になるという考え方です。
こうした価格調整による買い取りを行うのは、有価物の条件が「1円でも値がついたらOK」と考えているからではないでしょうか?
有価物の基準
実は、行政処分の指針についての通知(環廃産発第 1303299 号)には物の価値が、運送費を超えていることのみが有価物として取り扱われる条件とはなっていません。
5つの条件がある中で、取引価値の義務は1条件に過ぎません。
また、その内容も、「当該譲渡価格が競合する製品や運送費等の諸経費を勘案しても双方にとって営利活動として合理的な額であること」とあります。
この、合理的な額というのはとても曖昧で基準がはっきりとしていません。さらに「客観的に見て当該取引に経済的合理性があること」という部分にも注目です。“客観的に見て”がポイントです。
客観的な経済的合理性とは?
事業活動は、その規模によって適切な利益額というものあります。
最適な価格が具体的にわからなくても、「明らかにおかしい価格」はわかります。
10円のガムを売ると1円の利益が出る駄菓子屋は、あり得ると思います。
では、300万円の車を売ったら3000円儲かるディーラーは?
3000万円の家を売ったら、3万円儲かる不動産屋は?
明らかに成り立たないような気がしませんでしょうか?
では、1tあたり10円、10t満載で1車あたり100円の有価物はどうですか?
果たして、双方が合理的な利益を得ていると言えるでしょうか?
言えないですね。
排出事業者が処理業者から1円でも利益を得ることができれば、「有価物だ!」と言い切れるかというと、そんなことはありません。
判断基準があいまいなのには理由があった
「取引価値の有無」ひとつをとっても、その判断にはなかなか難しいものがあります。他4つの基準はさらに曖昧です。
すると、「なぜ有価物の基準(5つの判断基準)はこんなにも曖昧なの?」という疑問が生まれてくるかと思います。
その理由は、行政があえて判断基準を曖昧にすることで、抜け道を作らない仕組みにするためです。行政としては廃棄物を有価物と偽って不適切に処分されることを防ぎたいのです。
明確に基準を決めると、何かと理屈をつけて抜け道を作られてしまう可能性があります。
そのため、そもそもの基準を曖昧にすることで、本来廃棄物を有価物と偽っている場合には何かしらの理由で行政が廃棄物認定できるようになっています。
強引な有価物化は弊害が出てくる
本来、有価物は「明らかに有用な資源として活用できているか」という基準だけで充分なものです。そのため、無理やり有価物にしようとすれば、5つの基準のどれかに必ず引っかかります。
抜け道を作らないためにあえて曖昧にしてあるとなると、判断基準が曖昧なのも納得できますよね。
適切な判断のもとに有価物を引き取ることは全く問題ありません。しかし、「1円だけど価値がある。有価物だ」と考えている時点で、5つの判断基準に引っかかる可能性は十分に高いのではないでしょうか?
廃棄物として扱われるものを、有価物としようとしている方、現在の取引でそういったものがある方は、この機会に有価物の認識をより正しく見直してみてはいかがでしょうか?
委託契約書やマニフェストの書類管理の手間が省けるといった排出事業者側のニーズもあるかもしれませんが、適正処理には適切な判断が求められます。
執筆者
安井 智哉
廃棄物処理会社へ出向し実務経験を積む。現場で得た知識や経験をもとに、お客様の課題に真摯に向き合い最適な提案をおこなうコンサルタントを目指す。
また、静脈産業・廃棄物処理業界の”現場”が抱える課題に着目し、ITシステム等の様々なツールを活用したサービスの開発に努める。