COLUMN
コラム
廃掃法をわかりやすくまとめたり、廃棄物処理業界のDX化の事例をお伝えしています。
廃棄物処理会社様に向けたお役立ちコラムです。
顧客第一の提案が火災事故?!
2019年7月に起きた、高槻市で起きた爆発火災事故を覚えていらっしゃいますでしょうか?収集運搬会社のヤードでスプレー缶が爆発し大きな火災になった事故です。
先日、この事件について、排出事業者の社員含む、関係者5人が書類送検されました。その際の報道で、当時は明らかになっていなかった事件の詳細が分かってきました。
火災事故の根本原因は?
事件の概要は下記の通りです。
大阪府高槻市で2019年7月、産業廃棄物収集運搬会社でスプレー缶のガス抜き作業中に爆発が起きて3名が死亡、1名が意識不明の重体の火災で、許可を受けていない業者に廃棄するスプレー缶の運搬を委託したとして、産業用資材販売会社「MonotaRO(モノタロウ)」も廃棄物処理法違反容疑で書類送検される。
台風により被害を受けたスプレー機械部品用クリーナーの処分に困った男性社員が昨年5月、収集運搬会社に相談すると、「自分たちでガスを抜いたら安くできる。」と提案され、ガス抜きを行ったことが原因とされる。
記事では安全で適切なガス抜き作業が行われなかったことが事故原因とされています。
大量のスプレー缶のガス抜き作業を行うことで、可燃性ガスが充満し、作業で火花が散るなどして、引火してしまったのだと思います。引火の原因は予想がつきますが、それにしてもなぜこの様な作業が行われていたのでしょうか?
記事によると、ガス抜きは主に排出事業者が行ったようです…。
記事には「処分に困った(排出事業者の)男性社員が昨年5月、産廃収集会社に相談すると、自分たちでガスを抜いたら安くできると提案された。」とあります。
そのままではコストの折り合いがつかなかったのでしょうか?「ガスを抜いたら安く処理できますよ」という提案をし、一旦ヤードに受け入れて、作業場所まで提供していたようです。
良かれと思って、顧客第一で行った提案かもしれません。もしくは、顧客からの強い要望を断りきれずに「せめてガス抜きを」という苦肉の策だった可能性もありますね。当時のニュアンスまでは分かりませんが、なんとか低コストで受け入れられる提案をした結果、火災事故に発展してしまいました。
事故の根本原因は、「コスト最優先で、安全への意識が薄れてしまったこと」と言えるのではないでしょうか?
法違反にも注意して、毅然とした対応を
顧客からの要望は断りづらいものですから、なんとか対応したいと考えるのも理解できます。
特にコストに関する要望は、常につきまといます。
しかし、要望通りのコストで受け入れていたら、適正な処理が出来ないという事情も排出事業者には理解してほしいところです。
事故や法違反になってしまっては元も子もありませんよね。
今回の事故では、運搬会社のヤードが火災になったことに加え、排出事業者やその関係者に多数の被害が出ました。書類送検されてしまったのも、排出事業者です。お互いのためにも、安全や遵法については毅然とした態度で説明する必要があります。時には、断る勇気も必要というわけです。
執筆者
安井 智哉
廃棄物処理会社へ出向し実務経験を積む。現場で得た知識や経験をもとに、お客様の課題に真摯に向き合い最適な提案をおこなうコンサルタントを目指す。
また、静脈産業・廃棄物処理業界の”現場”が抱える課題に着目し、ITシステム等の様々なツールを活用したサービスの開発に努める。