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廃掃法をわかりやすくまとめたり、廃棄物処理業界のDX化の事例をお伝えしています。
廃棄物処理会社様に向けたお役立ちコラムです。
【労働安全衛生法改正】回収時、客先での安全対策強化が求められる?
2023年4月1日、改正労働安全衛生法が施行されたことはご存知でしょうか?
この改正は、石綿則、粉じん則、特化則等など、多くの関連規則も同時に改正されていて、広い範囲に影響する内容となっています。
実は、改正内容の一部は収集運搬時にも影響があるものです。多くの内容は、危険有害な作業を行う現場での安全を確保するための規制強化です。
工場内や、建設工事現場での作業を想定されています。ただし、回収時には客先の工場や工事現場などに車両が入りますから、その際に注意しなければならないポイントがあるのです。
全くの他人事ではありませんので、ざっくりとした概要と気をつけるべきポイントを押さえておきましょう。
労働安全衛生法の改正概要
今回の改正は、危険有害な作業を請負人に行わせる場合に、元請から下請業者や一人親方と呼ばれるような個人事業主に依頼する場合、依頼する側が安全配慮の措置をしなければならないというものです。
この安全配慮の措置は、今まで直接雇用する労働者にのみ行うことが義務付けられていたもので、「各社がしっかりやってね」という状態でした。
それが「下請けに依頼するなら、相手にもしっかり守らせてね」になったのです。
(出典:厚生労働省)
例えば、製造業では製造工程の一部を他社に委託することがあります。その際に、さらに下請けが入ることもありますね。この製造工程で化学薬品を使用する場合は、手袋やマスク、ゴーグルの着用などを徹底させるように周知しなければなりません。
この場合に、「下請けもわかっているだろう」と、お任せしているだけではダメで、しっかり安全対策をしているのか、元請けが周知したり確認したりしなければならないというわけです。
下請けが孫請けに依頼する場合は、同様に下請けが、周知・確認する義務があります。
このように「各社お任せ」から「依頼者側が責任を持ってチェックする」という形に変わるというのが、今回の改正に関して極めてざっくりした内容です。
収集運搬時の影響は?
これまでの解説では、基本的には工場や工事現場の中で作業をする場合が想定されているので、あまり自社への影響をイメージできないかもしれません。
しかし、冒頭でもお伝えした通り、収集運搬時には客先に車両が入り、回収作業をしますから、少なからず影響は出てきます。まず、工事現場から回収する時です。建物の新築や改築、解体の現場だけでなく、工場内設備の改修工事なども広く工事に含まれます。
建設廃棄物の排出事業者は元請業者になるので、収集運搬委託は元請業者から受けることになり、「安全配慮の措置」を元請業者から受ける立場になる可能性があります。
元請業者は今まで以上に現場内での安全に対して厳しい目で見ることになります。
「短時間で終わるから…」とヘルメットなしで作業するようなドライバーがいると、今まで以上に問題視されてしまいます。これまでヘルメットせずに作業していても、元請業者は自分の責任にはならないので、容認してしまっていたかもしれません。
しかし、今後は元請の責任になるので、厳しく注意される可能性があります。
注意して改善すればOKとしてもらえればまだ良いのですが、「現場でそこまでチェックしきれない」という理由から、「安全意識が徹底できていない場合はそもそも契約しない」という方針になる可能性もあります!
先手を打って、しっかり教育しておかないと、一人のドライバーの不安全行動で、取引が危うくなってしまう可能性が高まります。
工事に関係ない回収でも影響あり?
今回の改正は、基本的に元請以降の委託に影響があるので、工場の製造過程から発生する廃棄物を直接受託する場合には、改正の影響はありません。
ただし、厳密論では法的な義務がないだけで、実態としては影響があるかもしれません。
大きな工場を持つメーカーは、構内の色々な場所で別会社に委託をしています。改正法で、元請以降に規制が強化されるといっても、「発注者として、無関係ということにはできない」と考え、すべての委託先に対してより厳しい構内ルールを設け、発注者主導で改正法への対応を求める動きになる可能性も十分にあります。
こうなった場合に、廃棄物の回収に来る収集運搬会社に対しても、同じレベルで安全対策が求められることも考えられますね。
構内ルールが増えたり、事前の入構者教育が強化されたりといったことになるかもしれません。
やはり、どんな現場に向かうときでも、今まで以上に安全面を厳しく見られるという認識を持って、ドライバーの教育を行っておく必要があります。
執筆者
安井 智哉
廃棄物処理会社へ出向し実務経験を積む。現場で得た知識や経験をもとに、お客様の課題に真摯に向き合い最適な提案をおこなうコンサルタントを目指す。
また、静脈産業・廃棄物処理業界の”現場”が抱える課題に着目し、ITシステム等の様々なツールを活用したサービスの開発に努める。