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コラム
廃掃法をわかりやすくまとめたり、廃棄物処理業界のDX化の事例をお伝えしています。
廃棄物処理会社様に向けたお役立ちコラムです。
返ってこないマニフェスト、年間612件――管理票をめぐる指導・勧告は、年間273件
基準時点:令和8年10月現在
令和5年度に、マニフェストの写しが期限内に返ってこないため処理状況を把握して必要な措置を講じ、都道府県知事に報告した件数は全国で612件、マニフェストに係る指導は243件、勧告は30件でした(環境省調査)。
本コラムでは、環境省の公表データからマニフェスト(産業廃棄物管理票)のどこが指導の対象になっているのかを整理し、指摘を受けたときに何をすべきかを確認します。
【結論】
運搬・処分を受託した処理業者は、それぞれの作業が終わった後、マニフェストの写しを排出事業者に送付しなければなりません。これは排出事業者ではなく、処理業者自身の義務です。(廃棄物処理法第12条の3第3項〜第5項)
環境省の調査では、令和5年度にマニフェストの写しの送付に係る指導が合わせて25件ありました。
写しの返送期限を管理する仕組みを、担当者の記憶ではなく手順として定めておくことが、送付漏れをなくす方法として有効です。
この記事で分かること
・令和5年度の管理票に係る指導や勧告の件数と、そこから読み取れること
・処理業者自身の義務であるマニフェストの写しの送付に係る指導
・マニフェストの写しの返送遅れが行政に伝わる経路
・事業停止の事例と罰則の対象
・指摘を受けたときに何をするか
マニフェストをめぐる行政指導・勧告は年間何件あるのか?
環境省が公表している令和5年度実績のうちマニフェストに関係する数値を、令和4年度の数値と比較してみましょう(環境省調査・報道発表による)。
|
項目 |
令和4年度 |
令和5年度 |
|---|---|---|
|
管理票の写しの未送付を理由とする措置報告 |
―(未公表) |
612件 |
|
管理票に係る指導(廃掃法第12条の6) |
218件 |
243件 |
|
管理票に係る勧告(廃掃法第12条の6) |
16件 |
30件 |
|
報告徴収(廃掃法第18条) |
5,065件 |
5,008件 |
|
立入検査(廃掃法第19条) |
191,063件 |
183,763件 |
|
産業廃棄物処理業の許可取消し等 |
230件 |
316件 |
|
改善命令(廃掃法第19条の3)/措置命令(廃掃法第19条の5) |
6件/12件 |
11件/22件 |
▲ 表1:管理票に関する行政の対応(令和4・5年度、環境省調査・報道発表による)
出典:環境省報道発表(令和5年度実績等、2026年3月26日公表)、環境省「産業廃棄物行政組織等調査報告書(令和5年度実績)」をもとにイーテラス作成
件数が増えたことは「行政が厳しくなった」ことを意味しない
このデータから確認できるのは、行政処分や指導として計上された件数の増減だけです。違反がどれだけ起きているのか、そのうちどれだけが把握されているのかは、公表されている件数からは分かりません。数値の読み方には、次の点にも注意が必要です。
・許可取消し等の件数の推移は、令和元年度363件 → 令和2年度287件 → 令和3年度241件 → 令和4年度230件 → 令和5年度316件となっています。3年続けて減少したあとの増加ですが、令和元年度の数値を下回っています。
・許可取消し等の316件は、欠格要件への該当を含むすべての事由の合計です。マニフェストを原因とするもののみを示す数値ではありません。
・勧告30件のうち19件は特定の一条項に係るもので、前年度は0件でした。年度によって振れ幅が大きく、勧告件数の増減だけで傾向を読むことは適切ではありません。

マニフェストに関する指導の対象になっているのは処理業者のどの義務か?
環境省「産業廃棄物行政組織等調査報告書(令和5年度実績)」には、マニフェストに係る指導243件の条項別内訳が公表されています。
その数値を令和4年度の数値と比較すると、次のようになります。
|
指導の対象となった規定 |
令和4年度 |
令和5年度 |
|---|---|---|
|
廃掃法第12条の3に係るもの(小計) |
159件 |
167件 |
|
第1項(管理票の交付) |
80件 |
96件 |
|
第2項(管理票交付者による写しの保存) |
10件 |
12件 |
|
第3項(運搬受託者による写しの送付) |
12件 |
17件 |
|
第4項(処分受託者による写しの送付) |
6件 |
6件 |
|
第5項(最終処分終了に係る写しの送付) |
6件 |
2件 |
|
第6項〜第10項(保存・確認・報告等) |
45件 |
34件 |
|
法第12条の4・第12条の5に係るもの(小計) |
59件 |
76件 |
|
合計 |
218件 |
243件 |
▲ 表2:管理票に係る指導の条項別内訳
出典:環境省「産業廃棄物行政組織等調査報告書(令和5年度実績)」をもとにイーテラス作成
マニフェストを交付する義務(廃掃法第12条の3第1項)と、交付したマニフェストの写しを保存する義務(第2項)は、排出事業者と処理後の残さを他社に委託する中間処理業者にあります。令和5年度の実績では合わせて108件です(環境省調査)。これに対し、運搬を受託した者・処分を受託した者がそれぞれ終了後に写しを送付する義務(第3項〜第5項)は、処理業者自身が負う義務になります。
環境省の調査では令和5年度の指導のうち、運搬受託者による写しの送付に係るものが17件、処分受託者による写しの送付に係るものが6件、最終処分終了に係るものが2件、合わせて25件となっています。指導内容は「期限内に送付しているか」「必要な事項が記載されているか」といった点です。
中間処理業者は「交付する側」にもなる
環境省の調査で最多となっている96件は、交付義務に係るものです。一見すると排出事業者の話に思えますが、中間処理業者は処理後の残さを他社に委託するとき、自らマニフェストを交付する立場になります。自社が受け取る側と交付する側の両方であることを、確認体制の前提に置いてください。
マニフェストの写しの返送が遅れるとなぜ行政に伝わるのか?
マニフェストを交付した者は、環境省令で定める期間内に写しの送付を受けないとき、処理状況を速やかに把握して適切な措置を講じ、その内容を都道府県知事に報告することとされています(廃掃法第12条の3第8項)。環境省の調査では令和5年度のこの報告は612件ありました。
処理業者側から見ると、写しの返送が遅れることは単に取引先を待たせるだけではなく、取引先に「行政へ報告する」という手続きを発生させるということです。行政による立入検査とは別に、取引先からの報告を通じて行政に情報が届く経路もあります。612件という報告の規模を見れば、この経路を軽く見ることはできないでしょう。
※612件は、環境省調査において「管理票の写しの送付を受けなかったために報告した件数」として集計されたものです。記載事項の不備や虚偽記載を理由とする報告を含む数値ではありません。

マニフェストに関する義務違反で、処理業者が事業停止や罰則を受けることはあるのか?
マニフェストを理由とする行政処分は実際に公表されています。千葉県が近年公表した事例について、事業者名を伏せて2件を挙げます。
・2025年1月 マニフェストの交付を受けないまま産業廃棄物の引渡しを受けていたとして、廃掃法第14条の3に基づく事業停止の処分が行われた
・2025年3月 マニフェストの交付義務違反および記載義務違反があったとして、同じく法第14条の3に基づく事業停止の処分が行われた
出典:千葉県報道発表「廃棄物処理法に基づく行政処分について」(2025年1月20日付、2025年3月24日付)
いずれも許可取消しではなく事業停止処分です。期間を定めて事業を止められれば、取引先への影響は避けられません。マニフェストの未交付や記載事項の不備が、指導にとどまらず処分に至る可能性があることを示す例といえます。
罰則については、廃掃法第27条の2がマニフェストに関する義務違反を号ごとに列挙しています(e-Gov法令検索による)。処理業者に関係する主なものを次に挙げます。いずれも1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象とされています。
・写しを送付しない、記載すべき事項を記載しない、虚偽の記載をして送付した運搬受託者・処分受託者(第2号・第4号)
・処分受託者に管理票を回付しなかった運搬受託者(第3号)
・管理票またはその写しを保存しなかった管理票交付者・運搬受託者・処分受託者(第5号)
・管理票の交付を受けていないにもかかわらず廃棄物の引渡しを受けた運搬受託者・処分受託者(第7号)
・運搬または処分を終了していないにもかかわらず送付・報告をした運搬受託者・処分受託者(第8号)
※刑名は、2025年6月1日施行の刑法改正に従い拘禁刑と表記しています(e-Gov法令検索による)。
マニフェストについて指摘を受けたとき、処理業者は何をすれば良いのか?
指導や勧告、報告徴収などの連絡が来た段階での対応について、当社が実務上おすすめしている対応を4つのポイントに分けてご紹介します。
①事実関係を先に固める
対象となる期間のマニフェストや返送記録、契約書を先に集め、何がいつ起きたのかを時系列で整理してから回答してください。行政の認識と自社の記録が食い違う場合には、根拠を示して説明することができます。ただし、記載欄が埋まっているかどうか、期限内に送付されているかどうかといった事項は、記録から客観的に確認できるものです。説明の対象になり得るのは、主にそこに至った経緯や是正に向けて何を行ったかという部分になります。
② 期限を守る
報告徴収には期限があります。期限内の回答を基本とし、難しい事情があるときは放置せず事前に行政へ相談してください。
③ 是正の範囲を、指摘されたものに限定しない
1件の記載漏れが見つかった場合、同じ手順で処理している以上、同様の不備が他にもある可能性があります。指摘された1件だけでなく、一定期間分を点検しておくと是正状況を説明しやすくなります。
④ 記録を残す
いつ、誰が、何を確認し、どう是正したかを記録しておけば、その後の説明資料として活用できます。
平時の備え:自社が今すぐ取り組むべき3つのアクション
・写しの返送期限を管理する仕組みを担当者の記憶ではなく手順として定めておく
・記載欄の充足を、出荷時ではなく返送前に確認する工程を入れる
・取引先から照会が来たときの窓口と回答手順をあらかじめ決めておく
個別の事案での対応や判断については、許可を出している自治体にご確認ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 取引先から「マニフェストの写しが届いていない」と言われました。すぐに行政に報告されてしまうのでしょうか?
A. 報告の義務はマニフェストを交付した側にあり、環境省令で定める期間内に写しの送付を受けないときに生じます。まず、該当するマニフェストの交付日と返送期限を確認し、送付できていないものがあれば速やかに対応してください。個別の判断は許可を出している自治体にご確認ください。
Q. 記載漏れが1件見つかりました。過去の分もすべて調べ直す必要がありますか?
A. すべてを調べ直すかどうかは不備の性質と件数によります。ただし、1件だけを直して終わりにすることはおすすめできません。同じ手順で処理している以上、同様の不備が他にもある可能性があるためです。まずは同じ担当・同じ工程で処理した一定期間分を点検し、範囲を確かめたうえで是正するという順序で進めてください。
Q. 令和9年4月の施行規則改正で、電子マニフェストの報告事項はどう変わるのですか?
A. 電子マニフェストの報告事項の追加は廃棄物処理法施行規則の改正によるもので、令和7年4月22日に公布され、令和9年4月に施行される予定です。処分受託者は最終処分が終了するまでまたは再生を行うまでのすべての処分について、処分方法、処分方法ごとの処分量、処分後の産業廃棄物または再生された物の種類および数量などを報告することとされています。なお、追加される入力項目は施行前の令和9年3月31日までは任意項目として扱われます。報告する項目が増えれば、記載の不足や数値の不整合が表に出やすくなることは想定しておくべきです。
廃棄物処理業の実務・行政対応のご相談
マニフェストの返送期限の管理手順づくりや、行政からの指導・報告徴収への対応について、イーテラスでは処理業者様のご相談をお受けしています。お気軽にご相談ください。
▼行政処分リスク低減サービスについては詳しくはこちらをご覧ください。
出典一覧
・環境省報道発表「産業廃棄物処理施設の設置、産業廃棄物処理業の許可等に関する状況」(令和5年度実績等は2026年3月26日公表。許可取消し等の推移は令和2年度実績・令和4年度実績の各報道発表による)
・環境省「産業廃棄物行政組織等調査報告書(令和5年度実績)」13.2、14.1、14.2
・千葉県報道発表「廃棄物処理法に基づく行政処分について」(2025年1月20日付、2025年3月24日付)※事業者名は記載していません
・廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則の一部を改正する省令(令和7年環境省令第15号。2025年4月22日公布、2027年4月施行予定)/施行通知(2025年12月22日付環循規発第2512221号)
※本コラムでは、年度単位の統計は公表資料に合わせて和暦、個別の日付は西暦で表記しています。
執筆者
チーフコンサルタント 安井 智哉
廃棄物処理会社へ出向し実務経験を積む。現場で得た知識や経験をもとに、お客様の課題に真摯に向き合い最適な提案をおこなうコンサルタントを目指す。また、静脈産業・廃棄物処理業界の"現場"が抱える課題に着目し、ITシステム等の様々なツールを活用したサービスの開発に努める。

