COLUMN
コラム
廃掃法をわかりやすくまとめたり、廃棄物処理業界のDX化の事例をお伝えしています。
廃棄物処理会社様に向けたお役立ちコラムです。
サンプルの受入れにマニフェストや契約書は必要?
排出事業者から見積もり依頼があれば「サンプルをもらう」ことがありますよね?
汚泥やばいじん、廃液などのように、見た目からは成分がわからない場合には、サンプル評価を行うことが一般的です。分析表・WDSと並んで、見積もり時に重要な役割を持つ「サンプル」です。
排出事業者から「サンプルを出すのなら、契約が必要では?」「マニフェストがないと引き渡せない?」と質問されたことはありませんか?意外と疑問を抱いている担当者様も多いようです。
「サンプル評価」はどのように考えればよいのでしょうか?
サンプルの提供は、廃棄物の処理委託ではない
結論からお伝えしますと、排出事業者のサンプル提供は原則として処理受託にはなりません。そのため、委託契約書の締結やマニフェストの発行は不要です。
サンプル評価は、例えば廃液ならば500ml程度といったように、ごく少量の廃棄物をあくまで処理の可否や処理費用を見積るために受け取るものです。廃棄物の処理を目的としている行為ではありませんよね。
処理を目的としていませんから、処理受託には該当しないというわけです。
WDSの運用について書かれた「WDSガイドライン」には次の図が載っています。
注目すべき点は、サンプル採取が見積書作成や委託契約書締結よりも前工程に記載されていることです。
当然のことですが、(サンプル評価が必要な品目は)サンプル採取をしなければ見積りも契約もできず、サンプル提供に契約書が必要となると…さすがにおかしな感じがしますね。
ここは素直に、委託前の評価目的なので、サンプル評価に契約書やマニフェストは不要と考えるのが良いですね。
廃棄物のテスト搬入は例外
サンプル評価に契約書・マニフェストは不要と結論付けましたが、例外もあります。
「1車試しに受け入れてみましょう」という「テスト搬入」を行う場合です。貴社でも、お客様にテスト搬入を提案することはありませんか?これを「サンプル」という言葉を使うこともありますが、この場合は契約書・マニフェストが必要です。
ここまで解説してきたサンプル提供は、「ごく少量のサンプル」を「処分の可否」や「見積り金額の検討」のために受け取ることを前提としています。
サンプルの評価は、処理施設に投入せずサンプル評価のための実験室等で評価されるのが一般的です。焼却処理であれば、ごく少量をバーナーで炙り、燃え残りを確認します。中和処理であればビーカーの中で液を混ぜ合わせるといったものです。
このような作業であれば、処理ではありませんが、「10t1車入れてみて、一回処理してみましょう。問題なければ継続します」というような場合には、処分施設に投入し、実際の処理を行う為、委託契約書やマニフェストが必要だと言えます。
判断基準は、「処分施設に投入するかどうか?」です。施設に投入しない一般的なサンプル評価であれば、契約書・マニフェストは不要です。
いかがでしょうか?お客様から質問を受けたときも、根拠をもって対応いただくと信頼感もアップにつながるかと思います。
執筆者
安井 智哉
廃棄物処理会社へ出向し実務経験を積む。現場で得た知識や経験をもとに、お客様の課題に真摯に向き合い最適な提案をおこなうコンサルタントを目指す。
また、静脈産業・廃棄物処理業界の”現場”が抱える課題に着目し、ITシステム等の様々なツールを活用したサービスの開発に努める。