COLUMN
コラム
廃掃法をわかりやすくまとめたり、廃棄物処理業界のDX化の事例をお伝えしています。
廃棄物処理会社様に向けたお役立ちコラムです。
役員が欠格要件に該当したらどうする?役員を辞めたらOK?
前回、欠格要件について解説しました。
あまりにも厳しい基準に驚いた方もいるかも知れません。
さらに、こんなことを思った方もいらっしゃるのではないでしょうか?
「欠格になったらどうしようもないのか?何か手はあるのか?」
「役員が欠格になった瞬間に、解任してしまえばいいんじゃないか?」
この「解任作戦」は、欠格要件の話になると結構な頻度で聞きますし、これが有効だと思われている方もいらっしゃるようです。
社長が役員に対して「事故を起こしたら、瞬間にクビだからな」なんてことを言っているシーンにも遭遇したことがあります…
でも、その作戦…実は意味がないんです。
欠格要件を解説した通知によると…
「行政処分の指針について(環循規発第2104141号)」という通知があります。
全部で50ページ以上という、かなりボリュームのある文書なのですが、この中で欠格要件に該当した場合に行政がどのような対応をするのかが解説されています。
読んでみると、解任作戦についてバッチリ対策されています…。
欠格要件とは、申請者の一般的適性について、法に従った適正な業の遂行を期待し得ない者を類型化して排除することを趣旨とするものであり、産業廃棄物処理業者が欠格要件に該当するに至った場合には、許可を取り消さなければならないこと。
なお、法人の役員等が欠格要件に該当した場合に、法人が取消処分を受けることを免れるため、事後的に当該役員を解雇若しくは解任したり、又は役員自らがその地位を辞任することが考えられるが、法第14条の3の2第1項第1号から第4号までが欠格要件に「該当するに至つたとき」としているとおり、いったん欠格要件に該当した以上、仮に法人の役員等がその地位を完全に辞任等したとしても許可を取り消さなければならないこと。また、この場合に、退任等の時期を遡らせた変更の登記を行い、当該役員等が欠格要件に該当するより前に退任等していた旨主張するという事例も散見される。
しかしながら、そもそも、商業登記簿の登記事項に変更が生じた場合、当事者は遅滞なく変更の登記をすべき法律上の義務がある上、廃棄物処理業者の場合は、その役員に変更があれば変更の日から30日以内に届け出なければならず(法第14条の2第3項)、これに違反した場合は刑罰を科せられるものであるから(法第30条第2号)、欠格要件に該当した後に日付を遡らせた変更の登記がなされることそれ自体が不自然であり、この場合、特段の事情がない限り、当該変更の登記の存在にかかわらず、当該役員は在職中に欠格要件に該当したものと扱って差し支えないこと。
少々長いですが、簡単にまとめると…
・役員が欠格要件に該当したあとで解任しても許可は取り消す
・遡って登記変更したら違反。許可は取り消す。
上記のことを言っています。
ということで、解任作戦は意味が無いと言わざるをえませんね。
欠格逃れはやはり不可能…
解任作戦は明確に否定されていますが、実際に欠格のがれと思われる解任は行われますし、その後も許可取消になっていないというケースもあります。
しかし、これは「行政側が気づいていないだけ」の可能性が高いです。
廃棄物処理法と関係のない個人の罪で欠格になった場合、それを即座に管轄行政が把握するのは難しいのです。
なので、一見うまくいったように見えても、時間が経ってから発覚し、取り消されるという可能性があります。
そもそも、欠格要件に該当した許可業者は、自ら管轄行政に届け出る義務があり、直罰の対象となっています。
見つからないだけの状態で業を続けるということは、見つかった際のリスクをさらに高めることになってしまうのです。
結局のところ、「欠格要件に該当しないようにする」しか、有効な対策は存在しないということになります。
執筆者
安井 智哉
廃棄物処理会社へ出向し実務経験を積む。現場で得た知識や経験をもとに、お客様の課題に真摯に向き合い最適な提案をおこなうコンサルタントを目指す。
また、静脈産業・廃棄物処理業界の”現場”が抱える課題に着目し、ITシステム等の様々なツールを活用したサービスの開発に努める。