COLUMN
コラム
廃掃法をわかりやすくまとめたり、廃棄物処理業界のDX化の事例をお伝えしています。
廃棄物処理会社様に向けたお役立ちコラムです。
有価物にマニフェストは発行してOK?
突然ですが、下記のケースが起きたとき、皆さんは明確に答えられますか??
マニフェストの集計をしていたら、なんだか見慣れない内容のマニフェストが出てきた。確認してみると、契約を結んでおらず、そもそもその取引は有価物としての買い取りだった。事情を詳しく聞くと、有価物を持ち込まれた際に顧客がマニフェストを持参したので、流れで受け取ってしまったそうだ。有価物なので契約はなくても問題ないが…、有価物にマニフェストを発行してはいけないのではないだろうか。
有価物にマニフェスト発行は、違法?適法?
実は、マニフェストは発行義務があるもの以外に発行しても違法にはなりません。
例えば、こちらのQ&Aをご覧ください。
出展:岐阜県公式ホームページ「産業廃棄物管理票(マニフェスト)交付等状況報告書 Q&A」
(https://www.pref.gifu.lg.jp/uploaded/attachment/398610.pdf)
Q&Aでは「産業廃棄物以外にもマニフェストを使用するケースがある」ということを暗黙の前提として「有価物にマニフェストを使用しても報告書には書かなくていいよ」と言っています。
このように、有価物に対して発行義務のないマニフェストを発行することは違反にはなりません。この場合、マニフェストの書式が便利だから使っただけで、厳密にはマニフェストの発行実績ではないとみなされます。
電子マニフェストの場合も同様の機能があります。マニフェスト交付・登録が不要な再生利用制度や一般廃棄物であっても、電子マニフェストを活用して、マニフェスト情報と一体で管理したいとの要望が寄せられています。
このような場合にJWNETを活用するためには、連絡番号3の先頭に「999」と入力し、電子マニフェスト登録等状況報告(行政報告)から除外する必要があります。
出展:JWNET「廃棄物処理法に基づく電子マニフェスト」
(https://www.jwnet.or.jp/jwnet/practice/apply/kouiki/index.html)
例として挙げられているのは、再生利用制度でマニフェスト発行が免除されるケースや、一般廃棄物の場合ですが、マニフェスト発行が不要という条件は同じですね。電子マニフェストでは、連絡番号3の欄に999と入力すれば問題ありません。これは排出事業者が入力する項目なので、排出事業者に説明し、入力してもらいましょう。
有価物であることがわかるように、まぎらわしい書き方は避ける
有価物などにもマニフェストが使用できることはわかりましたが、実際に使用する際には注意事項があります。それは、「まぎらわしい書き方はしない」ということです。何がまぎらわしいかというと、「産業廃棄物用のスタンダードなマニフェスト」と区別がつかないことです。
冒頭の質問も「マニフェストがあるのに契約がない!!」という状態になっていました。見つけた瞬間は「とんでもない違反をしてしまったのでは…」と、大きなショックを受けたことと思います。これを発見したのが行政であれば「どういうことか?」と、かなり強く問いただされるかもしれません。ですので、備考欄に「有価物の記録として使用」というように、誰が見ても明らかな書き方で記録を残しておくことがポイントです。
排出事業者にも理解してもらい、A票の段階から記載しておくことが理想ですが、もし記載してもらえていない場合は自社控え(B1票やC1票など)だけでも記載しておきましょう。加えて、専用のファイルに分けて保管しておくことも有効です。電子マニフェストの場合は排出事業者が「999」と入力すれば問題ありません。
このように、マニフェストが不要なケースでマニフェストを使用することは違反ではありませんが、違反を疑われることの無いような運用を行い、スッキリと整理しておきましょう。
執筆者
安井 智哉
廃棄物処理会社へ出向し実務経験を積む。現場で得た知識や経験をもとに、お客様の課題に真摯に向き合い最適な提案をおこなうコンサルタントを目指す。
また、静脈産業・廃棄物処理業界の”現場”が抱える課題に着目し、ITシステム等の様々なツールを活用したサービスの開発に努める。