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COLUMN

コラム

廃掃法をわかりやすくまとめたり、廃棄物処理業界のDX化の事例をお伝えしています。
廃棄物処理会社様に向けたお役立ちコラムです。

ニュース解説 2025.12.10

企業体質や文化を変えるには?

先日、こんなニュースがありました。

【労災の発生場所を偽った疑い 千葉市の産廃処理業者を書類送検 高圧ホース洗浄作業中に転倒】
千葉労働基準監督署は10日までに、労働安全衛生法違反の疑いで千葉市稲毛区の産業廃棄物処理業「S社」と同社副部長の男性(57)を書類送検した。
書類送検容疑は昨年5月29日、同社の40代の男性従業員が成田市内の工事現場で起きた労働災害により被災し4日以上休業したことについて、成田労基署長に報告しなければならなかったのに、千葉市に所在する自社営業所で労働災害が発生したとする虚偽の報告を千葉労基署長に行った疑い。
千葉労基署によると、男性従業員は現場で高圧ホースを使って洗浄作業中、転倒して体を強く打った。
同署は容疑に対する認否を明らかにしていない。

いわゆる「労災隠し」のニュースです。
しかし、労災そのものを隠すのではなく、発生場所を偽って報告しています。
なぜこのようなことをする必要があったのでしょうか?

隠したのは本当の発生場所

労災が発生した場合、事業者は労基署への報告義務があります。そして、報告をもとに労基署が労災発生場所の調査を実施する場合があります。

今回のケースで、労災の発生場所を偽ったということは、おそらく「本来の発生場所を調査されたくなかった」と考えてよいでしょう。では、なぜ本来の発生場所を見せたくなかったのか?ここからはあくまで予想ですが…例えばこんな2つの理由が考えられます。

・現場が明らかな違法状態であった
本来必要な安全設備が用意されていないなど、現場に明らかな違法状態がある場合、調査によってさらなる取締りの対象となる可能性があります。
そのため、調査されても問題ない場所で労災が発生したことにする可能性があります。

・元請など関係者から圧力があった
どんな現場でも、労災はないに越したことはありません。しかし「ゼロ災」を強く意識しすぎるあまり「労災の発生などあってはならない!」という圧力が発生する現場もあります。
特に工事現場では、元請業者の管理責任も問われるため、優越的地位にある元請が労災を認めないという可能性もあります。
もしくは、元請から具体的な指示がなかったとしても、今後の取引継続が危うくなるなどのリスクを考え、労災の発生を言い出せずに別の場所で怪我をしたことにする…という可能性もありますね。

余談ですが、筆者が小学生の頃、あるクラスの担任教師が「欠席者ゼロ日数」をカウントしていました。(目標達成すると学期末に何らかのご褒美があった記憶があります)
このように、理想の状態を強く標榜するあまり、都合の悪い事実をなかったことにする力が働くことがあります。

「安全第一」「適正処理」は建前になっていないか?

労災隠しのみならず、企業コンプライアンスは社員一人ひとりの「正しい順法意識」が何より重要です。
しかし「コンプライアンスを徹底せよ!」の一言で終わるような単純な話ではありません。コンプライアンスを強化するために必要な「知識」は教育などで伝えることができます。しかし、それを実行に移すには大きなハードルがあります。

それは、職場の体質…空気といっても良いかもしれません。廃棄物処理業は、安全と環境とは切っても切り離せない職場です。
皆さんの職場の空気はどうでしょうか?

どんな職場も「安全第一」を掲げています。
しかし「急いでいるから手順を飛ばした」「コストがかかるから安全設備を設置しなかった」「人手が足りないから無資格者に作業させた」などの、安全第一に行動しなかった結果が事故につながった事例は多くあります。

廃棄物処理業では「適正処理」も同じですね。廃棄物処理法や水質汚濁防止法などの厳しい環境法の規制内容を伝えても「マニフェストのこんな細かなことで本当に罰せられるの?」「そこまでやってたら現場が回らないよ」「(適法に対応する準備ができていなくても)こんなことで仕事は止められないから…」という声を聞きます。
これらの言動に共通するのは「(結果として)コンプライアンス以外のものを優先している」ということです。時間やコストなど、短期的なメリットを追ってしまったり「顧客に迷惑がかかる」「解約されるかも」といった周囲との摩擦を避けるパターンもあります。

「安全第一」や「コンプライアンス徹底」という言葉は掲げていても、結果としてコストや時間などを優先してしまう空気があるのかもしれませんね。

職場の空気を変えるには?

こうした空気を作ってしまう要因は、一概に言えるものではありません。
例えば「法律を調べてみたんですけど、〇〇するべきじゃないですか?」という意見が出てきたときに、周囲がどのような反応をするかというレベルでも変わってきます。
明らかに嫌そうな反応をした場合、どうでしょうか?その人は次から言い出せなくなりますね。法改正の情報を現場に展開したときに「こんな無茶な要求をされても困る」というクレームが返ってくるケースもあります。そもそも法律のクレームを社内で言われても…となってしまいすが、これもやはりコンプライアンスからは遠ざかってしまいます。

反対に、企業として大切にすべき物事の優先順位をしっかりと明文化し、それだけでなく日頃から積極的に伝え続ける活動をしている企業は、意見や行動がどんどん良くなっていく好循環が生まれます。
例えば「安全に必要な対策設備を常に改善・更新し続ける」という趣旨のメッセージを明文化し、管理部門から現場に対して頻繁に「何か危険を感じる箇所はないか?」と確認します。そして、現場から出てきた意見の多くが採用されれば、次からも安全のための意見が言いやすくなります。

企業体質や文化といった、職場の空気は一朝一夕で変えられるものではありません。
世の中には不祥事を繰り返したり、またそれを隠していたことが発覚し「隠蔽体質」と世間から評価されてしまう企業もあります。
だからこそ、日常からしっかりと力をかけ続けて、会社として何が大事か、何を優先するかをじっくり根気よく浸透させていく必要があります。
理念やスローガンは掲げただけでは、やはり社員全体には伝わりづらいものだと思います。日々の業務に落とし込めるようにすることで、徐々に企業体質の変化へとつながっていきます。

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