COLUMN
コラム
廃掃法をわかりやすくまとめたり、廃棄物処理業界のDX化の事例をお伝えしています。
廃棄物処理会社様に向けたお役立ちコラムです。
過去の見積り・商談メモを、次の受注に変えるには? 産廃事業者の営業情報の活かし方
このシリーズでは、紹介や既存取引に頼りきりの状態から抜け出し、受注が途切れない会社をつくる方法を、回を分けてお伝えしていきます。これまでは、顧客情報を個人の記憶から会社の資産へと変える「情報の残し方」を扱ってきました。今回はその次の段階、貯めた情報を実際の受注や再取引にどう活かすかを取り上げます。
以前は定期的に声がかかっていた会社から、いつの間にか相談が来なくなった。見積りを出したまま、その後の動きが追えていない。担当者が変わると、過去の経緯が分からなくなる——。受注の土台が崩れていくのは、こうした「すでにある取引」を取りこぼすところから始まります。今回は、貯めた顧客情報を「見るだけ」で終わらせず、実際の受注につなげるための考え方をご紹介します。今回の記事をお読みいただくだけでも、明日から自社の情報を見直す切り口が手に入るはずです。
私たちが実際に重視しているのは、顧客情報を「保存すること」ではなく「次の一手に変えること」です。過去の見積りや相談の内容、商談で出た一言、断られた理由を整理し「次に誰へ、何を、どんな理由で提案するか」が見える状態にしておく。そうして得た手応えを、また次の提案の進め方に反映していく。こうして情報が会社の中で回り続けると、顧客情報は単なる記録ではなく、受注を支える材料に変わっていきます。
はじめに、ここで言う「顧客情報」を整理しておきます。これは、会社名や担当者名だけではなく、対応した廃棄物の種類、過去の相談内容、出した見積り、そのときのやり取りの経緯まで——受注につながる判断材料のすべてを指します。
情報は貯まってきたのに、なぜ受注につながらないのか
顧客とのやり取りを、個人の頭の中だけでなく会社として記録に残し始めた——そこまでは進んでいても、こんな場面に心当たりはないでしょうか。
・記録はしているが、結局あとから見返すことがなく貯めっぱなしになっている
・以前に相談を受けていた会社から、いつの間にか声がかからなくなっていた
・過去のやり取りの中身は、担当者の頭の中にしかなく、その人が動かないと何も進まない
これらは、記録の量が足りないから起きるのではありません。多くの場合、原因は「貯めた情報を動かす仕組み」がないことにあります。
貯めた情報が「眠ってしまう」3つの原因
原因1:見返すきっかけがない
記録は、残した瞬間に役目を終えるものではありません。次の提案や連絡のときに見返してこそ、価値が生まれます。しかし、「どういうときに、どの記録を見返すか」が決まっていないと、せっかくの記録は保存されたまま眠り続けます。貯めること自体が目的になってしまうと、この状態に陥りやすくなります。
原因2:取引先の変化に気づける仕組みがない
以前に相談や取引のあった会社は、放っておくと少しずつ離れていきます。特に産廃処理は、担当者の交代や他社からの一声で、取引先が静かに切り替わることが珍しくありません。過去のやり取りを記録していても、「そろそろ連絡すべき相手」に気づく仕組みがなければ、動くべきタイミングを逃してしまいます。
原因3:情報が担当者の中でとどまっている
記録が形式上は残っていても、その中身の意味を分かっているのが担当者一人だけ、という状態はよくあります。こうなると、担当者が忙しいときや不在のときに話が止まり、引き継ぎのたびに情報が抜け落ちます。情報を「会社の資産」と呼べるのは、必要な担当者がいつでも使える状態になってからです。
解決策:営業情報を「次の一手」に変える3つの使い方
この壁を越えるには、情報を貯める仕組みに加えて、貯めた情報を次の一手に変える視点を持つことです。特別なツールがなくても、次の視点で見直すだけで、眠っていた情報が受注につながり始めます。
①過去の見積りを「再提案リスト」に変える
過去に見積りを出した会社について、そのときの廃棄物の種類や条件、提示した金額を記録から拾い出します。「あの条件なら、今また提案できるのではないか」という相手が見えてくれば、それが再提案リストになります。過去の見積りを土台にすれば、提案の精度もスピードも上がり「よく分かってくれている」という信頼につながります。
②途切れた取引を「掘り起こしリスト」に変える
しばらく連絡のない会社や以前より相談が減った会社を、記録から拾い出します。完全に切れてしまう前に一声かけられれば、再び接点をつくれる可能性があります。「そろそろ連絡すべき相手」を定期的に洗い出すことが、安定した受注につながります。
③担当者の記憶を「会社で使える営業材料」に変える
誰が電話を受けても、その会社の過去のやり取りをすぐ確認できれば、対応の質が担当者ごとにばらつきません。必要な担当者がいつでも情報を使える状態にしておくことが、会社全体の受注力の底上げになります。
情報は「貯める」より「回す」
情報は、貯めるだけでは受注につながりません。過去のやり取りを次の提案に使い、途切れそうな兆しに先に気づき、対応の質を会社でそろえる。そして、そこで得た手応えをまた次の提案に返していく。この「回す」流れができると、眠っていた情報が受注を支える材料に変わります。
情報を「回す」仕組みはどこまで進められるか
私たちが現在一緒に取り組んでいる、ある産廃事業者の実際の現場では、この「回す」状態を仕組みとして根づかせようとしています。たとえば、過去に見積りを出したまま止まっている会社、しばらく相談のない会社、担当者だけが経緯を知っている会社を記録から洗い出し、次に誰が・いつ・何を確認するかを整理する。こうした小さな見直しから始めています。過去のやり取りを記録に残すだけでなく、必要な担当者がすぐに引き出せる形に整え、次の提案や連絡に使えるようにする。そして、その提案でつかんだ反応を、また次の動き方に反映していく取り組みです。
さらに一部の会社では、もう一歩進んで、商談でのやり取りそのものを記録・整理し、担当者一人の記憶に頼らない形に変えていく動きも出てきています。こうした具体的な進め方は、次回以降で順次ご紹介していきます。
この「回す」という考え方は、営業担当者が持ち帰る情報だけに限りません。今後は、現場に出るドライバーや作業担当者が日々の業務で気づいたことをはじめ、取引先で言われた何気ない一言や、現場で感じた変化なども、会社の受注材料として活かしていく考え方が重要になります。担当者一人の記憶にとどめず、必要な担当者へ広げていく。そうした流れができれば、会社全体で受注機会を拾える状態に近づきます。
ただし、商談の記録や過去のやり取りをこうして活用する際には、記録することの目的や、誰がその情報を扱うのかを社内で決めておくことが欠かせません。相手方との関係で必要な同意や、保存・閲覧のルールを整えたうえで進めることが前提になります。仕組みは、こうした土台があってはじめて安心して回せるものです。
今回、自社でできること
まず直近で「途切れてしまった取引」または「失注した相談」を1件だけ選び、その記録をあらためて見返してみてください。
☐ そのとき、相手は何を求めていたか(どんな廃棄物・どんな条件・どんな相談だったか)
☐ 自社はどう対応し、その後どこで連絡が途切れたか
もし記録がほとんど残っていなければ、それ自体が「今、何を残すべきか」の答えになります。
1件を振り返るだけでも「貯めた情報のどこを見れば、次の受注につながるか」が見えてきます。
すべての取引をさかのぼる必要はありません。まず1件からで十分です。
営業担当者の努力だけに頼らず、会社として受注機会を拾える状態にしたい——そう考えたときは、まず今の顧客情報の残り方を確認するところから始めましょう。「うちの記録の残し方で、こうした見直しができる状態になっているか」「担当者一人にとどまっている情報を、どう会社で使える形にするか」——こうした点でお悩みの場合は、イーテラスにご相談ください。実際の進め方をご覧いただける個別のご相談で、自社に当てはめながら一緒に整理するところから始められます。
まず全体像を知りたい方には『崩れない会社づくり支援』のサービス資料もお送りいたします。
執筆者
チーフコンサルタント 安井 智哉
廃棄物処理会社へ出向し実務経験を積む。現場で得た知識や経験をもとに、お客様の課題に真摯に向き合い最適な提案をおこなうコンサルタントを目指す。また、静脈産業・廃棄物処理業界の"現場"が抱える課題に着目し、ITシステム等の様々なツールを活用したサービスの開発に努める。


